今日、永遠と茶髪バカと知り合った。
面白い奴らで久々に大笑いした。

茶髪バカがいちるにケー番とメアドを教えろと言っていたので殴ってやった。
そしたらお前に金貸してんだからお前も教えるんだよ!と殴り返された。

いちるはケータイを持っていなかった。

ここずっと一緒にいて、
いちるは貧乏なのだと結論が出た。
だからあのボロアパート。眼鏡とコンタクト。夕飯食べに行こうと誘ったのを断ったのも。
実際この日は夕飯を作っていたが、明日食べてもよさそうなメニューだったし…
貧乏だろうが関係ねー。
でもいちるが気をつかって負担にならねーよに、俺が気をつけとかねーとな…。

眼鏡屋で別れた後、いちるを家まで送り夕飯をごちそうになった。
いつもどおりに旨かった。
帰り際、ドキドキしながら明日一緒に出掛けようと誘ってみるも、返ってきた言葉はこれだった。

「……明日は翼くんと遊ぶ約束をしているので…ムリです…ごめんな…さい」

は?は?翼って誰だよ……おいおい…。
翼君だから男だよな…。ぜってー男だよな…。
二人でなんて会わせねぇぞ…。

この時いちるにしてはかなり必死に駄目だと断ってくるもんだから、
気が気じゃなくなった。
……俺というものがありながら…

何とか無理矢理約束を取り付けて俺はアパートを後にする。
俺が見えなくなるまで、いちるは玄関から手を振ってくれた。

幸せすぎる……。

そして俺は蒼生に呼ばれスケアへ向かった。

スケアは昼はカフェ夜はバーで、
アケルさんって人が経営してる店。

夜は俺たちゴロツキが集まる溜まり場のようになっていた。

「あっ!キモかわ生物あまねちゃーん!!」

店に入ると蒼生が聞き捨てならねー言葉と共に手を振ってくる。
俺は端のカウンターに座っている蒼生の腕を掴む。

「いでで!ちょ!やめてよ!折れちゃう」

「折ろうとしてんだよ…」

「店で傷害事件起こすんじゃねーぞ」

カウンターの奥にあるキッチンから、鎖骨位の長さの髪にユルいパーマ。
それを耳の上の部分を赤い林檎のチャームで結び、無精髭。
お洒落と言ってしまえばそうなのだが…
なんつーか清潔感がないというか…。
アケルさんは存在感がユルい。

「んで?お前恋してるんだってな。明日はちゃんと誘えたのか?キモかわちゃん」

蒼生を睨み付ける。
アケルさんにまで喋りやがって…
ということは…。

「いちるー!愛してるぜー!」

黒髪にブリーチを乗せたような髪色の光馬。

「私も愛してるわー!あまねー!」

長めの前髪を前で留めたチャラい感じの真純。

二人で抱き合ってキスした。

「……おい…いちるはお前みてぇにブサイクじゃねーんだよ!!」

右ストレートが真純に綺麗に入った。

「ツッコむ場所そこぉ?!」


一悶着も落ち着き、俺たち四人は仲良くカウンターについた。
左から蒼生、アケルさん特製カルボナーラを食べている。
そして俺。
横に藤 光馬。大好きなコーラを飲んでいる。
端には深川真純。スマホいじりながら「あー」とか「まじでー」とか独り言。
これから遊ぶ女とメールでもしてるんだろう。

料理やらカクテルやらはバイトに任せ、アケルさんが俺たちの前に立つ。

「おい、天音。お前まだヤッてないんだって?明日から槍が降るな」

ぶはははっと豪快に笑うアケルさんをこれでもかと睨む。

「信じラレナーイ!天音はボクと同じ人種だったハズなのにぃー!
なんか変なモノでも食べちゃった?」

真純は無視。いちいち付き合ってると疲れる…

「天音がいないと女の子なかなか捕まらないんだヨー!ボクもう溜まりにたまってさぁ…」

「一人で触っとけばいいじゃん。それも得意でしょ?」

カルボナーラを食べながら蒼生が茶化す。

「蒼生が手伝ってくれるのもアリだなぁ…どう今日これから…」

「友達誘うんじゃないよ!気色の悪い…あっ…想像しちゃった!」

お嫁にいけないー!と隣でうるさい蒼生の頭を軽く叩く。

「光馬、お前。茶髪バカ…じゃねーや…
白木冬吾と同じ学校だろ?アイツどんな感じ?」

冬吾の名前に隣の光馬がピタッと止まる。

「何?知り合い?」

「知り合い…になんのかな?今日会ったんだよ…」

うーんとねぇ…と宙を見ながら記憶を手繰りよせるのは、コイツの昔からの癖。

「喧嘩強くて明るい奴で…確かホモって噂で更に有名人かな。」

えー!ホモなの!!知らなかった!蒼生が食べながら喋るもんだから、カルボナーラが飛んでくるのにイラつく俺。

「別に…苛められたりはしてねーんだな…?」

俺の発言を聞いて光馬が右の眉毛を器用上げる。俺が冬吾を心配してるのが気味悪いようだ。

「うん。強くて有名だし面倒見もいいらしくて顔もカッコいいし、男子女子問わず大人気かな」

「なら…良かった」

「天音が誰かを心配するなんて、明日は槍プラス毒矢が降るな」

コーラを飲みほしアケルさんに追加注文。

「んで?誘えたの?明日のデートは!」

食べ終えた蒼生はいつの間に注文していたのか、苺のタルトを頬張っている。

「誘ったら…明日は男と会うから断られた…
だから無理矢理ついて行くことにした…
邪魔してやる…
…いちるに触っていいのは…この俺だけなんだよ…」

ふと視線を感じ周りを見ると、
哀れみと軽蔑の眼差しでこちらを見ている。

んだよ…こいつら…
いちるが他の男と…邪魔してやる!絶対邪魔してやる…

「これは明日、槍プラス毒矢プラス爆弾が落ちてくるな…」

あまねがここまで重症とは…とかなんとか蒼生が言っている。

「まとめるとー!明日は世界崩壊だぁ!じゃあボクは崩壊する前に、
ヤリ倒してきまーす!!」

明るく宣言して真純は店を出て行った。

アケルさんは俺を笑いながら楽しそうだ。
人のことだと思って…

「天音、明日がんばれよ。
お兄さんからのアドバイスはな、
殺人は犯すなよ。あと…ストーカーもほどほどにな。」

ぎゃははと笑いながら奥のキッチンに消えて行った。

「本当、天音にこんな恋する日がくるとは。
明日どこに行くって?」

光馬がコーラを飲みながらこれまた興味津々に聞いてくる。

「…いちるの家の近くの公園…」

「公園デートかぁ。じゃあ俺も帰るわ。天音と蒼生はどーすんの?」

蒼生はケータイのメールをチェックしながら、俺も帰るよと席を立つ。
皆帰るんならと俺も帰ることにした。

店の前で蒼生と光馬と別れて俺は、誰も待っていない自宅へと向かった。



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