「あまねー、今日はいちるちゃん迎えに行かなくていいの?」

HRをサボり屋上でダラダラしていた俺と蒼生。

「…明日休みだから、いちるとどっかに行きてーんだけど…」

「あっ!誘うのに勇気が出なくてどうしようかなぁ〜って考えてたら会うのためらってんだ!
キモかわいー!何この生き物〜」

こいつ殺そう…そうしよう…

「ん?、あれいちるちゃんじゃない?」

蒼生の言葉に反応してそちらを見ると、いちるが職員室に何かを運んでいた。
あれが終われば教室に戻るんだろうな…
さぁて、俺も移動すっかな。

「にしてもあまねがねぇ…。明日いちるちゃんをスケアに連れてくれば?
みんなも、アケルさんも会いたいだろうし」

スケアにいちるを連れいてく?
考えるだけで寒気がする…
ぜってーヤダ。

「連れて行く所決まってないんでしょ〜」

「…俺の家に呼ぶ」

目を白黒させる蒼生。
そりゃそーだ、俺は女を絶対部屋に入れないからな。
他人が部屋に入ってくるなんて考えただけで吐きそうだ。

「エローい!あまねエローい。事に及んで嫌われないようにねー」

それはそれで面白いと笑うクソヤローを軽く殴ってやった。

「最近変な噂が流れてるみたいだから気をつけなよ…」

妙に真剣な顔した蒼生に、噂がどうだってんだよ…と吐き捨てて屋上を後にした。
階段を降り、いちるの教室へ顔を出す。

…いちるがいねー。

鞄はあるからまだ職員室か?
待つのも暇だから職員室まで迎えに行く事にした、中に入るのが嫌で外で待っていたが一向に出て来ない。
痺れを切らした俺は結局中に入るはめになる。

C組の担任は…一人…。
いちるがいない。
んだよ…入れ違いになってたみてぇーだ。
さっさと確認してりゃよかった…。

となると教室かよ。先に帰ってないといいけど。
職員室を出て俺は早歩きで、いちるの教室を目指す。

「天音さん!!」

前にいた二人組から名前を呼ばれて立ち止まる。
誰だ…コイツら。

「さっき天音さんのクラスに、C組の眼鏡女が来てたんで追っ払いましたよ!」

アッシュグレーの髪色のヤツが得意気に言った。

…おっぱらった…?眼鏡の女を…?

「天音さんが迷惑してるから近づくなって眼鏡壊してやりました!」

レッドブラウンの髪が喋る。

…眼鏡を壊しただと…?

…いちるの?

「お前ら…面覚えておくからな…今、殺されないだけ有り難く思っとけよ…」

ぽかんと口を開けっ放しの二人組に殺意を覚えながらも、
俺はいちるを探した。

怪我…してたらどうしよう…。

焦る俺はいちるの教室へ走る。
着いた教室には鞄が無くなっていて、クラスにも誰も残っていなかった。

帰ったのか…?まだ間に合うか…?

靴箱へと全力疾走した俺は…
とてつもなく見たくなかった光景にぶち当たってしまった。

いちるの顔に…顔を寄せる背の高い黒髪の男…。

さわるな…いちるにさわるな…

「…君なに?僕を殺す気?」

いちるから離れ俺を見た男。
女みたいな印象を受ける顔に、その肌の白さ。

「いちるから手ぇ離せ…」

「あっ!その声は姫野くん!」

俺に気づいたいちるに近付き、男から引き離す。

「姫野くん…ごめんなさい、眼鏡を壊してしまって先に帰ろうとしてたんです…」

「コイツと…?」

そしていちるは眼鏡屋まで連れてってくれるはずだったと説明してくれた。

「この人、君の彼氏?そうには見えないけど…」

黒縁眼鏡を掛けた奴は軽く毒を吐いてくる。

「……いえ!彼氏じゃありませんよ!!大事なお友達なんです…けど…」

今の言葉は胸に刺さる…友達…。
けどって何よ…?

「怖い顔の友達だね。僕が彼女を連れて行くと約束した」

さぁ、と言いながらいちるの手を引く黒縁眼鏡。
んだよコイツ…。

「ダメに決まってんだろぉ…このヤロ…」

男の腕を掴みかけた時、その男の後ろからやって来てた何かに思いっきり殴られた。
倒れ込むのをギリギリで踏ん張った俺は前を見据える。

……誰だコイツ。
明るい茶髪に俺と同じ位の身長。
学ラン着てるから、この学校の奴じゃねぇな。

「お前!永遠に触るんじゃねーよ!って…その金髪!その顔!姫野天音!!」

うるせーヤローだな…。
口ん中切れたじゃねーかよ…。
ちょっと黙らせてやろ…。
一歩踏み出そうとした時、黒縁眼鏡が喋り出した。

「冬吾!何してんの?女の子がそばにいるの気づかなかった?もし当たってたらどう責任取るつもりだったんだ?」

俺を殴ったヤローは途端に大人しくなった。
何なんだよ…コイツら。

「だって姫野天音が。永遠に触りかけてたから頭にきてよ」

「謝れ。」

はぁ!!とデカイ声で信じられねぇと叫ぶ。

「謝罪なんてどうでもいいんだよ…
俺はいちると眼鏡屋に行く。
お前!次会ったら何も言わずにぶっ飛ばすから覚えとけよ!」

いちるの手をまた握ろうとする俺に、黒縁眼鏡が立ちはだかる。

「ダメ。僕が連れて行く」

そして黒縁眼鏡はさりげなくいちるの手を握る。
怒り以外の感情ってあったっけ?
思い出せねぇよ…

「そうですよね!…約束は守らないと…連れてってください…えとトワさん…」

いちるは俺より黒縁眼鏡を選んだ。

でも眼鏡が壊れた原因を考えると俺は何も言えなかった…。

「俺も行く…てめえ…いちるから離れろ」

俺にいちる、黒縁眼鏡と俺を殴った奴。
なぜかこの四人で眼鏡屋に行くはめになってしまった…。






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