前髪と眼鏡で目を隠し、小さな頃からつまらない存在と言われ続けてきた不気味な私は、
昔から友達がいませんでした。

それが高校入学して2ヶ月、生まれてはじめての友達ができました。

背が高くてとてもキレイな顔立ちの彼は、
人に触られることが大の苦手らしく、
最初に会った時、それを知らなかった私は殴られてしまいました。
知らないことは罪だな、彼に悪いことをしてしまったと反省。

2回目に会ったのは私の住むアパートの近くの公園。
彼のキラキラ光る金髪を見つける時はいつも怪我をしてて、次は死んでしまうのではないかと不安になった。

でもそれは間違えでした。
彼はヒーローのように現れて私のことを助けてくれました。
スニーカーをくれたお礼にカレーライスを食べてもらって、
おいしいと笑ってくれて。

私にとって彼のすべてが明るくて輝いてみえた。

彼が帰った部屋の中は、ひどく冷たく感じて、
今日あったことすべてが夢だったのかもしれないと、いたたまれなくなって布団を被って早めに寝ることにしました。

朝、玄関を叩く音で目をさまし、時計を見て遅刻ギリギリ!!と焦りながら扉を開けると、
昨日の彼が立っていました。

改めて冷静に見ると、
彼とこのアパート…そして私…

すべてが不釣り合いで玄関の扉を思いっきり閉めてしまったが、すごいスピードでまた開けられてしまい、
「てめっ!なんで閉めんだよ!!」
と朝から怒鳴られました。
「…すみません…寝ぼけてました…」
謝った私に、大きな声出してごめんと小さな声が聞こえた。

それから3日、朝アパートへやって来て一緒に登校。放課後も教室へわざわざ来てくれる。
苛めはなくなりましたが、クラス以外の人達から影でコソコソ言われることが増えました。

"格好いい彼となぜお前が一緒にいるのか"

多分そう言った内容だと思います。
私にも分からないので気にしないのが一番、
とまぁ、回想しながらHR終わりに担任の先生の手伝いで職員室へ荷物を運び終えて、
教室へ帰ろうと思った時、
他のクラスの先生達が話していた中に、
彼、姫野くんの名前が出たのでついつい盗み聞きをしてしまった。

「丸井先生のクラスの姫野、悪い噂しか聞きませんが…授業サボってばっかりなんでしょう?退学になった方が楽でしょうに」

「ガラが悪いですよー、まったく…
学校行事に真面目に取り組み参加さえしてくれたら…」

私はそれを聞いて、
急いで姫野くんの教室へ走った。
姫野くんが学校行事に出ないと退学になってしまう!!

でも私は先生達の話に続きがあったことを知らなかった。

「…いやー実は見かけによらず授業は普通に教室にいるんですよ。テストの点もかなり良くて…
何だか居るだけで怖くてね…行事だけに顔だしてくれるくらいがちょうどいいんですよ」

「人は見かけによらないもんですね…」


走りに走った私はF組へ着いた。
他のクラスに行くなんてしたことない私は、
途端に緊張しだした。
でも早く伝えないと…
意を決して開いていた黒板側のドアの隙間から教室を覗き、
姫野くんを探す。
放課後だけどほとんどが残っていて人数が多い。
でも、目立つ金髪は見つからなかったが、
かわりに私のことを嫌っているであろう視線を痛いほどに浴びる。

「お前、C組のキモ女だろ!」

私の事だと瞬時に分かり声の聞こえた方の廊下に目をやる。
アッシュグレーの髪とレッドブラウンの髪の
男の子二人がこちらに向かって歩いて来た。

「天音さんに付きまとって、天音さん迷惑してんだぞ!!」

そう言ってアッシュグレーが私の右肩を掴んで体を壁に激突させた。
その拍子で掛けていた眼鏡が落ちてしまった。

「天音さんに近づくんじゃねーぞ!」

バキっと眼鏡が破壊される音が私の耳に残る。
あ…眼鏡って…高いのに…。
どうしよ…眼鏡ないとぼやけて何も見えない…
私、今日帰れるかな…
明日、土曜日でラッキーだった…。

壊された眼鏡を手探りで探し、拾い上げて私は壁つたえに歩き、
なんとか自分の教室まで戻った。

かばんに持って帰るものを詰めて、靴箱を目指す。

姫野くん…どこに行ったのかなぁ。
早目に伝えなくちゃいけないのになぁ。
でもこんな状態では探せないし。
姫野くんの友達に、姫野くんが私と一緒にいることを不安にさせていたなんて…

しょんぼりしながら靴箱の前に立つ…
あ…どうしよう…
自分の靴箱がどこかわからなかった…

立ち尽くす私に、

「君、目が見えないの??」

優しい声と同時に私の肩に触れた手。

「…あのいや…目は見えるんですが…眼鏡を壊してしまって…」

助けてくれるのはこの人しかいない。
頑張って甘えてみよう…断られたらその時に考えよう。

「すみません…C組4番の靴がどこか教えていただけませんでしょうか…」

「…ん」

私の手を引き靴の場所を教えてくれた。
ありがとうございますと三回ほどお礼を言って頭を下げて、私は靴を履き替えた。

歩き出そうとした時、またあの手が私の手を引いた。
びっくりした私に、

「家に予備の眼鏡あるの?」

ないですと伝えると、その人は、

「眼鏡屋まで連れてってあげるよ、暇だから」

と言った。
世の中には優しい人がいるんだと感動した。



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