虹色の花びら


暗闇の中にほわりと現れた光が点滅し始めた。

ピカ ピカ ピカ…

消えることなく続く点滅に、
まるで自分の名前を呼ばれているような気がした。

今まで辺りが真っ暗過ぎて、
オレは目を開けているのか閉じているのかすら分からない状況だった。
でも分かっていたのは、
側にノバリがいないこと。
オレはあの時死んだ。
生き返らなかったんだ。

光の点滅は同じ間隔で発せられている。
体の感覚が全くない中、
オレは光の方に向かうことにした。
歩く感覚もない。
ただ意識だけが残っているようだ。
博士はきっと、こんな感じで過ごしていたんだろう。
風が吹けば消えてしまいそうに儚い存在。
これがゴーストなのかな。

ふわりふわりと光について行くと、
光は突然消えてしまった。
どうしたもんかと立ち止まる。
すると突然光が目の前で弾け飛んだ。
その眩しさにとっさに目を閉じる。

目のチカチカが収まった頃、
オレはゆっくりと目を開いた。

そこは世界の全ての色を集めてきたような花畑だった。
オレの視界に広がる一面の
色、色、色。

ノバリに見せてやりたい。
喜ぶだろうなぁ。
そこでオレは自分が死んでもうノバリに会えないことを思い出した。
オレはゴーストのまま、
この綺麗な花畑で1人、
永遠に浮遊し続けるのか………
頭がおかしくなりそうだ。
でもきっとこれは今までしてきたことへの罰なのだろう。
けれど後悔はしていない。

だがオレはノバリに会える方法を探す。
時間だけは腐る程あるのだから。
そんな事をぼんやり考えていたら、
大きな風が吹き花を揺らした。
散った花びらが青空へ巻き上げられていく。
それはまるで虹のようだった。
空を見ていたオレは視線をまた元に戻した。

「虹色の花びら…綺麗ですね」

その声の人物は優しく笑った。

「博士!!!」

驚いて駆け寄るオレは慌てすぎてつまづいて転けた。
あれ?……転けた??
痛みも、ある。
意識だけの存在だったオレに、
体の感覚がある。
この不思議な体験に目を白黒させていたら、
今度はまた、聞き覚えのある声がした。

「だいじょーぶ?」

手を伸ばして来たのは……

「ラル!!」

もう訳が分からない。
ここはなんなんだ??
ラルの小さな肩にはあの白いカラスも止まっている。

「私とラルはお友だちなんですよ、
私が消えてしまった後、
ラルが迎えにきてくれました」

ラルは恥ずかしそうに微笑んで、
博士のズボンをキュッと握りしめている。

「じゃあ…オレも一緒に」

博士はオレの言葉を遮って、
言った。

「あなたの帰る場所は、
ここじゃないんです。
ドクロ…私、昔あなたに会えて良かった。
本当に良かった。
もうこの白旗も必要なくなりました。
そんな日が来ると信じてきました。
……ずっと…ずっと…」

博士が泣いたし、
オレも泣いた。
本当、笑っちまう。

色んな感情が混じってぐちゃぐちゃになって、
全ての記憶が涙とともに流れていきそうだ。

「本当にありがとう。
昔も、今も、これから先もずっと…
大好きですよ。
ノバリの事、頼みますね」

博士とラルが遠ざかっていく。
待って…行くな!
行かないで!!
走って追いかけようとしたのに、
足が動かない。
なんなんだよ!!

離れていく博士は最後にこう言った……。

「ありがとう」

博士とラルは手を繋いで、
オレに手を振った。

それが全ての終わり。



「みんな!!!
ドクロが目を覚ましたよ!!」

ベッドから起き上がったオレは、
ノバリからの愛の抱擁という強烈なタックルを受け、
意識を取り戻した。
また騒がしい毎日が始まりそうだ。

「ありがとう」

オレは小さくお礼を言った。
この世の全ての大切なものへ。





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