ビスケットのモデル


ビスケットの庭では、
ドクロとノバリと夜々以外が集まって、
それは賑やかだった。

「お日様の下にゴーストがいるなんて、
なんか可笑しいね」

無邪気に笑うポルカ。

「今はちゃんと体ありますから。
ゴーストなんて言わないで下さい」

反論する博士も笑っている。

「?」

裾をぴょんと引っ張られ博士は横を向く、
そこにはニッカがいた。

「どうかしましたか?ニッカ?」

「白旗…あ、違った。
博士…あのね、
ずっと気になってたんだけど、
博士とビスケットの笑う顔が似てるのって、
自分の顔を元にビスケットを作ったからなの?」

とても些細なことだけれど、
ニッカは前からこの答えが知りたかった。

博士は優しく微笑むと。

「ビスケットのモデルは、
私の母ですよ。
私は母が大好きだったから。
でも私たちは短命の一族。
母も若くして亡くなりました…
だからJemmyに来て1人っきりだった私は、
ビスケットを造ったんです」

ニッカは一瞬驚いた顔を見せたが、
すぐに笑顔になって、

「博士のお母さんは素敵な魔女だったんだね!
だって博士のお母さんだもん!」

キラキラ輝いたニッカにはいつまでも、
ここにいる皆の光であってほしいと、
博士は心の中で祈った。

「最期にドクロとお話がしたかったんですが…
この分だと無理でしょうかね…」

博士はドクロの寝ている部屋を見上げて呟いた。

そこにいた者全てが、
口には決して出さなかった。

"いつ、消えてしまうのかって"


朗朗はあの時の博士の言葉を思い出していた。


"死人は死人としてあるべきです"と。


夜が終わり太陽と共に朝が来て、
光と戯れ昼になる。
星と一緒に夕が迫り、
暗闇と月が夜をまた、
連れてくる。

長い間を繰り返すほんの一瞬。
その時が巡ってきたら、
博士とはもうきっと永遠に会えない。

皆はそれを知っている。
また悲しむんだ、きっと。
また痛むんだ、きっと。
また行かないでって泣くんだ、きっと。

でもそれだけじゃないってことも、
皆はわかってる。

だから最期は笑顔を見せるんだ。

でもきっと、
皆は泣いてしまうね。

そして博士が笑うんだ、
なんて顔をしてるんですかって。

そういう自分も泣いてるくせに。

それで皆は笑うんだ。





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