流れ星


目の前に現れたのは、
服は破け体中血だらけの二人。
あの日の…
処刑される直前の姿だった…。

人の形に戻れたのに、
二人は動かぬ人形のように、
声を発することもなく静かに立っていた。

少しでも風が吹けば倒れて飛んでいきそうに儚く、
脆い。

夜々の目玉は朗朗にくり抜かれたまま。
どす黒く赤い空洞に、
果てしない闇が見えた。

ここにいた全員が息を飲んだ。

「うぉぉぉぁぁぁぁ!!!!
何でだよ!!
何でだよ!!」

朗朗は発狂したかのよう叫んだ。

目から涙を垂れ流し頭をかきむしりながら、
膝から崩れ落ちた。

「死んだ姿のまま生き返るのは、
初めてですね…」

ビスケットは悲しそうに言った。

「今までは無かったのにな。
ドクロだけの力では、
二人の核の消滅を防ぐまでしか出来なかったのか、
それともJemmyの力自体がもう、
無くなってきてるのかもな」

ショコラは鎖に繋がれた小さなラルを、
思い出していた。

「きっと大丈夫だよ。
みんなで看病すれば、
元気になれるよ!
だって二人は生き返ったんだから!」

ノバリはそう言うと夜々と戀々の元へ走って行った。
その後をニッカも追った。

「朗朗、目を開けてください。
ノバリや皆は、
誰一人あきらめていませんよ」

博士がうずくまる朗朗の背中をポンポンと叩き、
すべてを見届ける義務が、
朗朗にはある事を伝えた。

朗朗はハッとし、
涙を無遠慮に両腕でゴシゴシと擦った。
痛いくらいで、丁度いい。

「こんにちは、はじめまして!
ぼくはノバリ!
こっちはニッカ。
立つのきつくない?
座ってもいいんだよ?」

まったく動かぬ二人に話しかけるノバリ。

「こんにちは…ニッカです。
まずは体を綺麗にしないといけないから、
ビスケットのお家に行きませんか?」

ニッカが戀々の冷たい手をとった瞬間、
静電気のような鋭い痛みが走った。

それと同様にノバリが夜々の手を繋いだ時にも、
同じ反応が起こった。

それを合図にしたかのように、
夜空から薄緑色の流れ星が一つ、
凄まじい勢いで朗朗めがけて降ってきた。

朗朗はあっという間に光に包まれ外からは、
姿が見えなくなってしまった。
そして数十秒後…。
流れ星の光は今度は夜々と戀々。
隣にいたノバリとニッカにも降り注いだ。

何事かと眺めるしかない他の皆。
心配でたまらず駆け出そうとしたポルカを、
ショコラが止める。

朗朗とノバリ達を包んでいた、
大きな光の束が闇夜に散った。


そこに現れたのは…
瞳を取り戻した夜々と戀々がいた。
体についていた傷もすべて良くなっている。
しかし、戀々の両足の義足はそのままだった。

ニッカとノバリは、
さっきまで氷のように冷たかった手のひらが、
血が通いはじめ温かさを取り戻したことに気がついた。

「あれ、ここ…どこ?
目が…見えてる…」

夜々はパチクリと瞬きをし、
不思議そうにノバリを見た。

「あなたは…だぁれ?」

戀々も繋がれた手の先にいる、
見た事のないニッカを不思議そうに見ている。

「よかった…よかったね!
朗朗!二人とも目が覚めたみたいだよ!」

ノバリは嬉しそうに泣きならがら朗朗に聞こえるように、
大きな声で言った。

朗朗は…
笑いながら泣いていた。






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