赤い悪魔と白い羊


3時間後。
ニッカから取り出した目玉を持って、
ポルカとショコラ、
そして手術したばかりのニッカまでが駆けつけてきたので、
皆は驚いた。


「よし、朗朗がハサミでドクロの封印を解いてくれ。
力のないオレ達がやっても無理だろうから。
次に目玉を入れて博士が呪いを解く。
そして次が最も重要。
ノバリがドクロの心臓を…えっと…
何か手頃なの無いかなぁ…
朗朗が使ったハサミでいーや。
それで心臓を突き刺したらOK!
時間との勝負!ヘマするなよ!」

ショコラの言葉に皆、真剣な表情で応える。
約一名は「オレの命をなんだと思ってるんだよ」と少しだけ不機嫌だった。


ついに、朗朗がドクロの瞳の封印の黒い糸に、
ハサミを滑りこませた。

「今まで、疑っててごめん」

朗朗の謝罪にドクロも、

「あの時…助けられなくてすまなかった」

二人は長い月日の捻れ込んでしまっていた
絡んだ感情の糸をほどいていく。


パチン。

朗朗がハサミを入れた瞬間に、
断ち切った糸と皮膚の間の細い隙間から、
真っ黒い煙と風が、
たちまち部屋中に立ち込めた。

「おい!皆いるか?!手を伸ばして隣のヤツと手を繋げ!」

視界はすでに無くなり何が起こるか分からない状況で、
IQの声に反応し手を伸ばす。

「ニッカ大丈夫?あ、この手はビスケットだね」

ポルカはニッカを掴まえ、
反対の手でビスケットをつかまえた。

風は生温かいと思えば冷たく、
魔王の積年の情念がどれだけ深く濁りを増していたかが、
痛いほどに伝わる。

「目障りだ。散れ」

オルガの声と共に窓が開く音が聞こえ、
風が煙を押して窓の外へと流れていった。

消えゆく煙の中でオルガの持っている緑のマジックハンドが、
ギラギラと光を発していた。
オルガが魔法を使ったのだ。

「この煙を消すとは、さすがです!オルガさん!」

興奮した博士にオルガは、

「こんなこと苦でもない」

表情にこそださないが声が照れくさそうで、
博士は心の中でふふっと笑った。

「よし、ドクロ。瞼を開けて」

とても長い間閉じられていた瞼は中々開かない。
業を煮やしたショコラは指で無理やりこじ開け、
目玉を強引に入れ込んだ。

「いて!いて!優しくしろよ!目玉潰れるじゃねーか!」

ドクロがやいのやいの文句を言うが、

「うっさい、黙ってろ。
こんな頑丈な玉、ちょっとやそっとで潰れるかよ」

二人で文句を言いながらもやっと目玉を取り戻したドクロに変化が起こった。

体が元の姿、背の高い青年になっていた。
着ていたズボンはビリビリに破けているので、
すかさずドクロは黒い煙に紛れ魔法でいつも着ているズボンをまとった。

「さぁ博士、早く胸の封印を解いてくれ」

博士は慌ててつけていた両手の手袋を外し、
左胸にあるドクロのタトゥーへと静かに手を乗せた。

「長い間、お疲れさまでした」

博士の言葉に反応したようにタトゥーが、
すっとドクロの肌から離れ、
花火のように燃えながら散っていった。

「ノバリ!急いでください!中にある核が飛び出ようとしています!!」

ドクロの皮膚の下で、
球体がぐにぐにと動き回っているのが分かる。
外に出たくてウズウズしている子供のよう。

「ノバリ、大好きだよ」

愛おしくてたまらないノバリを見つめ、
ドクロは優しく声をかける。

「ぼくも大好きだよ。赤い悪魔さん」

ノバリの決意が宿ったハサミは、
勢いよくドクロの心臓を突き刺した。
溢れ出す赤い血に、
止まらないノバリの涙。


そしてドクロは穏やかな表情のまま

死んだ。






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