譲渡
「この子、ぼくにちょうだい。
ねぇいいでしょう?」
ノバリは玩具を貰うかのように至極軽い口調だった。
「えーどうしようかなぁー。 一応俺のだしなぁ」
朗朗は勿体振った様子でノバリを見る。
「じゃあ、ドクロの居場所教えてくれたら、
こいつはノバリにあげよう」
いい考えを思いついた!とばかりに、
わざとらしくポンっと手の平を叩いた。
そして朗朗の後ろに隠れていた私の右腕をぐいっと掴んで、
ノバリの前に差し出した。
「…ドクロの居場所?」
ノバリはキョトンとした表情で朗朗と私を交互に見つめる。
「そう。
どーせ俺と会う前まで一緒にいたんでしょ?」
「うん。さっき遠くに朗朗が見えたらドクロ逃げてったの」
朗朗はドクロという人物に逃げられるくらい、良く思われていないようだ。
「……ほっんと、つれないなぁ〜。
そういうのを“いけず”って言うんだよ」
「…イケズ?? あのね、
ドクロね、キコリーズの所に行くって言ってたよ」
ノバリは私と引き換えにドクロの居場所を簡単に吐いた。
「教えたんだから、約束守ってね」
朗朗はサンキューとノバリに軽い挨拶をし、
私をあっさり置き去りにした。
道に残されたのは、
私と不思議な生き物ノバリだった。
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