ハサミ


「具体的にどうすればいいーんだよ」

まだショコラのことを完全には信用していない朗朗が疑いの目線を向けながら質問する。

「ドクロの目玉の封印を解く。コレでな」

ジャジャーンと得意気に取り出したモノに、
そこにいる皆がひいた。


「おい!ハサミって…ふざけてんの?!」

ドクロがたまらずツッコミを入れる。
それもそうだろう。
ショコラが出したのは至って普通の銀色のハサミ。
こんなもので悪魔の王様にかけられた封印が解けるワケがない。

「まぁまぁ、話聞いてよ。オレも最初は思ったよ、
は?ハサミって。
まずな…ドクロ…。
魔王はもう死んでるんだ。」

「………そうか。」

無表情を装ってはいるがドクロの瞳が遠くをぼんやり映していて、
過去を思い出しているようだった。
朗朗は驚いた表情でその事実を知らなかったようだ。

「ドクロは魔王を封印し動けなくしただけで殺してはいなかった、
その後すぐにフレイムがとどめを刺したってさ。
それでだ。
魔王が死んでいる今、ドクロの目玉の封印を解くことは可能なんだよ。
まぁ、オレ達の微力では元々解ける代物ではないけどな」

「それでそのハサミを使うんだね!!」

ポルカとニッカは期待に瞳を輝かせながら興奮している。

「待ってください。ドクロの封印を解くということは…
ニッカは渡した目玉を…返さないといけない…のでは?
そんな事をしたらニッカは…」

ビスケットが強張った表情でニッカを見て言う。
そして注目を浴びたニッカは笑った。

「もらったモノとはいえ、これはドクロのだから私は大丈夫です!
返さないといけない日が来るのは何となくだけど分かってたから」


この言葉に怒りを示したのは…朗朗だった。


「大丈夫ってなんだよ!大丈夫なんかじゃねーだろ!ニッカ!
へらへら笑ってんじゃねーよっ!
お前分かってんのか?!
目玉抜いたら消えちまうんだぞ!!」

朗朗がニッカを庇い心配し声を荒げる姿、
これが本当の彼なのかもしれない。

彼は今まで“大丈夫”という言葉にどれだけ傷ついてきたのだろうか?
初めはドクロの力を無くす道具になればと連れてきたニッカに、
妹と弟の影を見てきたのも事実。
そんなニッカが犠牲になろうとしている。
一度ならず二度も死を迎えなければならないというのか。

「ハイハイ!オレの話を最後まで聞けっつてんの!
何回言わせんだよ」

ショコラはイライラしながらパンパンと手を叩き再び注目を促した。

「ニッカの目玉を抜いてもニッカは死なない。代わりの力を与えてもらうから!
ニッカはいなくならない。
安心しとけ!
手順としてはこうだ。
よぉーく覚えろよ。
オレがニッカからドクロの目玉を摘出し、
博士がハサミで目玉の封印を解き、
そこにドクロの目玉をはめ込み魔力を回復させる。
次に博士が心臓の呪いを解く。
ここからが重要だからよく聞けよ。
呪いを解くとドクロ以外の核は行き場を無くし飛び出てくる可能性がある。
そうなる前に素早くドクロを殺す。
巨大な魔力を持ってるお前だ、確実に三人が生き返るはずだ」

理論上は上手くいくが…。
どうなるかはやってみなければ分からない。
だが全ての願いが叶う方法はこれしかない。
皆は決意を固めた。

「……ニッカ、辛い思いをさせるな…すまない」

朗朗はニッカの元へ行き優しくけれど弱々しく謝罪する。
それに驚いたのはキコリーズとオルガ。
彼らは朗朗の隠していた本質を知らないからだ。

「じゃあ今からオレとニッカとポルカは研究所へ行く。
早くしないと博士がいついなくなるか分からないからな」

そう言ってショコラはハサミを博士に渡した。
ノバリは不安そうにニッカを見る。

「ショコラ、ぼくもニッカについてる!」

ノバリは出口に向かっていた三人に駆け寄った。
だがそれを制したのは…博士だった。

「ノバリ、あなたはドクロの鼓動を止める役目があります。」

キョトンとしたノバリに博士は言い聞かせた。

「私が呪いを解いたあと、ドクロを殺すのは…ノバリなんですよ。
誰がやっても納得しないでしょう?
ね、ドクロ?」

後ろにいたドクロに問いかけた。

「当たり前だ。この命はノバリの為に存在してるからな。
他のヤツに殺されたら死んでも死にきれねーよ」

ドクロが笑うと博士は…

「それ、私のことですか?」

と膨れっ面になった。







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