フレイムとショコラ
ショコラはなぜあんなことを言ったのか、
それは時間を少し戻してラルのいる不思議な森での出来事をみてみよう。
ノバリはスタタタタと墓へと猛スピードで走って行ったのを慌ててドクロが追った。
「えっ!ちょっと気が早いよ!待って…よぉ〜ってもういねーし…
ばっかじゃねーの?
朗朗と会っちゃったらどーすんだよ」
ブリブリ怒りながらもショコラは視線と集中を博士の日記に戻した。
「ショコラくんは冷静だよネー」
フレイムのブーツが視界の端でフワフワ浮いているのが見える。
「だってさ、考えも無しに動いても意味ないし…疲れるだけだし…」
もっと昔の記事に戻らないと…。
「読むの速いけど、何を知ろうとしてるの?」
ん?オレ何を知りたがってコレ読んでんだ?
「いや、朗朗が手に入れたがってたから見られたくないことでも書いてあったりするのかなーって…」
ってことは博士が白旗持って乗り込む前の博士と朗朗が接触した記事を…。
あ、あった。コレだ。
さっきドクロが言ってた話と全然違うんだけどどーなってんだ?
魔王は二人に嘘を吹き込んで互いに不信感を植えつけた?
嫉妬ってコワイな…。
朗朗苦労してんだな…だから性格あんなにネジネジねじ曲がっちゃったんだな。
「ん?朗朗の弟の…目玉?アイツはそんなの探してたのか。
ドクロが隠し持ってるわけないよなぁ。
アイツJEMMY来た時死にそうだったし、
次の日子供の姿になったから服はビスケットが用意してたし… 」
手詰まりになったオレはごろんと横になった。
そしてフレイムに話しかける。
「JEMMYって凄いよなぁ〜。なんせ死人が生き返るんだもん。
ラルってほんとに神様だよ」
「ねぇ…死んだらみんな生き返るの?」
ラルが足枷の鎖をじゃらじゃら鳴らしながら言った。
「創った本人が聞くんだね…それ。」
悲しい話だ。
こんな天才も罪人として鎖に繋がれるなんて。
「条件は強い核の持ち主であること」
オレがラルに教えるなんて…。
こっちが聞きたいこと山ほどあるのに。
「横から口を挟むのどうかと思うんだけど、
ドクロくん、目玉の魔力なくなって核も弱まってるかもしれないよネ」
「そっか…そうだよな。
しかも自分のも合わせてあの小さい体に3つもあるし…
は?!そしたら…」
オレが気づかなかった位だ。
他の誰も考えてはいないだろう。
じゃあ、誰も生き返らないのにみんながこのJEMMYに振り回されているだけだってこと。
「ばっかみてぇ!!!」
空に思いっきり叫んだ。
そしてまたオレは博士の日記を読み、
朗朗達が魔王から受けた続けていた仕打ちを知った。
「せめて朗朗が探してる目玉があればなぁ」
「あるヨ。私が今ここに持ってるもの」
オレはその場に凍りついた。
「フレイムこそさ、何を企んでるの?なんかこえーんだけど…」
「私はただ…ラルさんが消えていくのを止めたい一心だったんだけど…」
青いビロードの小さな巾着を、感情の読めない表情で見つめる。
そしてフレイムはほいと、
それをオレにくれた。
「コレ、どこにあったの?」
「ドクロが魔王を封印して直ぐにね、私が魔王の息の根を止めました。
あれは生きていると厄介だから。
魔王の体を物色中に見つけたのを持ち帰ったワケ」
フレイムの目的はきっとラルの消えていく力を少しでも補う為に、
魔力を集めているのだろう。
…そういえば不思議の森の入口が見つかってから、
オルガが来たり朗朗が計画を実行し始めたり…
「フレイムは、JEMMYに集まった力を全て奪うつもり?」
ノバリの綿毛、
ビスケットのエネルギー源、
ニッカの目玉、
IQやオレとポルカの核、
オルガと朗朗の魔力。
「あれ?もしかしてラスボス?」
一気に汗が流れ落ちていく。
こんな敵、オレに倒せるはずないじゃん!!
「落ち着いてショコラ。何言ってるか全然わかんなーいから。
黒い狼さんの探し物は偶然持ってただけだよ。
でもラルさんの足しになればと思って返す気はなかったけど」
フレイムは鋭い牙を見せてはははと笑った。
オレもつられて笑うしかなかった。
「さぁーて!となると…残りはドクロの力を戻さないといけないワケか。
無理な話だこと!
短時間でそんな方法見つかるわけないよ」
「あるよ。その方法」
フレイムがさらりと可能だと言った。
そしてオレはその説明を受け不思議の森を出た。
フレイムも葛藤があっただろう、けれど力を貸してくれたんだ。
だから急がないとすべてが崩れ去る前に!
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