不思議な男の子
夜になり船員が休む為に船室に戻り、
ガヤガヤしていたのには気づいていたが、
私は寝たフリを続けハンモックに収まっていた。
それでも知らぬ間に寝てしまっていたようで、
ハンモックが勢いよく揺れるのと、掛けられた声で目が覚めた。
「おい。ついたぞー」
目を擦り起きた先には朗朗が立っていた 。
「俺とお前は、ここで降りる」
朗朗に連れられて甲板に出た。
浅い砂浜の後ろには、緑が生い茂る山 。
何もない小さな島に見えた。
「んじゃ、俺らは降りるから、また迎えに来てね」
朗朗は船員に告げた 。
「1日したら迎えに来ますんで」
船員はニコニコ笑いながら言った。
私と朗朗は、この小島に置き去りにされた。
少し歩いて森のある場所に差し掛かった時、
地面に不思議な赤く光る線が見えた気がした。
もう一度目をこらして見ると、その線は消えていた。
「…なんだろ?」
ボソリと呟いたが朗朗は聞いてないらしく、
そのまま気にせずに歩いて行くので、
私もついて行くしかなかった。
結構歩いたら山道が段々開けてきて、
歩きやすい平地になった。
すると朗朗が前方に人影を見つけて、
大きな声を出した。
「あっ!ノバリ〜! ちょうど良かった!」
ノバリと呼ばれた人物は、トタトタと走り近づいてきた。
「あ〜。朗朗。久しぶり〜」
なんだか気の抜ける挨拶だった。
朗朗の影からノバリという人物をのぞき見した。
頭の左右から角が生え、上半身は裸で腰から太腿辺りにかけモコモコの綿みたいなモノに覆われていて、右手と右足に黒い包帯のようなモノを巻いている。
「朗朗、だれ?その子」
ノバリは私を見つけ覗き込むように体を傾けた。
私はビックリして一歩下がり、ノバリから離れる。
ノバリは興味津々といった様子で私を見ていた。
「あー、こいつは俺が拾った、人間の子よ」
朗朗はノバリに説明する 。
「ふーん」
そして目の前の人物は驚きの言葉を吐いた。
← back →
TOP