消えた朗朗


「王様…朗朗は何処へ行ったんですか?」

子供の頃から魔王はオレの部屋にやって来る。
それが嫌でたまらなくなったのはいつからだっただろう…。

先ほど魔王はフラりと部屋に入ってくるなり、
そのままオレのベッドにゆったりとした動作で腰掛けた。
そして喋る気配もなくオレをただじっと見つめてくる。

オレはこの空間の雰囲気に耐えられず、
日々疑問に思っていたことを聞いた。

処刑の後、独房へ入っていると思っていたオレは朗朗を探したが、
見つからなかった。

噂話はごまんと聞いたが、
そのどれも適当な内容で脚色された話に過ぎなかった。

「あの狼が気になるか?」

ツンと突き刺すような声に魔王の瞳。
怖くないといえば嘘になるだろう。
オレですら話しかけること自体がおそれ多いのだから。

「気に…なります。
独房にもいなかった。
地下から脱走なんて出来るはずもない…」

殺したのですか?


その言葉を聞いた魔王は、
至極愉快だといわんばかりに腹の底から笑っている。

「あの狡猾な狼は弟妹の命を引き換えに命乞いをした。
地に頭をこすりつけ泣きながらな。
だから我は望みを叶えてやった」

それだけだ。

しんとした部屋の中。
オレの体温はみるみる下がっていくのに、
廻る血液は沸騰し今にも爆発して、
身体がバラバラに吹っ飛んでいきそうだ。


でも脳はどこか冷静で。
でも心はどこか哀しくて。



「その顔が見たかった」


魔王の言葉は聞こえなかったけれど、
満足そうに笑う顔は酷く綺麗だった。

魔王は座っていたベッドから立ち上がり、
オレの傍に来た。

「愛している」

そう耳元で囁いて、
オレの身体を捕まえた。

オレの運命もかなりねじ曲がってるようだ。









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