処刑場


夜々と別れてから5日後、
爆音が地下内にて響いた。

部屋にいたオレは魔女からの攻撃かと思い、
慌てて音の方へと走った。

煙の量が増え逃げていく悪魔達を押し退けながら進み、
着いたのは…研究所地区。

建物が残惨と散らばり、
黒色の火が揺れながら燃えている、
その中を警戒しながらゆっくりと歩く。

「ここは…」

爆音の根源らしき場所を見上げる。

そこは…戀々が収容されている建物だ…。

瞬間に最悪のことを考えてしまったオレは、
自分の頬を殴り粉塵上がる中へと入っていった。


「戀!戀!いるか!?戀々!!」

叫ぶオレの声は煙にかき消される。
所々に収容されていた悪魔の死体が転がる。

そして前方から走ってくる影が二つ。
魔女だと思いオレは構え声を張った。

「オイ!!止まれ!!止まらなければ攻撃するぞ…!!
ろ…朗朗…夜々?」

そこにいたのは予想だにしていなっかった、
戀々を背におった朗朗と夜々だった。

「この爆破はお前らの仕業か?応えろ」

目の前の面子を見ただけで、
この爆破の犯人が誰かなんて明白で…
逃がしてやることは…できない。

オレはオレの運命をまっとうする。
そのために生きているんだ。

言い聞かせて言い聞かせて、
それを現実世界に張りつけるんだ。

「ドクロ…どいてとは言わない。
…………見逃してくれ」


朗朗の紅い瞳を見たのは、
それが最後だった。


「公開処刑だとよ…何十年ぶりかねぇ」

今日、この日。
夜々と戀々は処刑される。
あの秘密基地に設けられた処刑場には沢山の野次馬が集まっている。

「でも処刑は弟と妹なんだろ?反逆の張本人は何処へ行ったんだ?」

下世話な言葉が飛び交う中…

一際高い位置に作られた断首塔から魔王が現れ、
姿を見た者から瞬間に声を閉ざしていき、
あんなに五月蝿かったはずの処刑場は、
それが嘘のように静まりかえった。
皆が息をのむ。


「最近、我の名が入った噂話を耳にした…
その噂では我はすでに死んでいるそうだ。
可笑しなことも在るものだな。
我は笑いが止まらん。
我を笑わせた褒美に、
この幸せを皆にも分けてやろうと思ってな。
罪者をこちらへ」

魔王が従者に目で合図をし、
連れてこられたのは首から腕の太さ程の鎖をつけられ、
手足を枷で拘束された夜々と戀々。

戀々はもう立つこともままならず、
首の鎖を従者に無理矢理引きずられ、
顔や体が地面に擦り付けられている。

夜々は両目がなくなっていた。
包帯もつけられず、
えぐりだされたであろう赤黒い血で体中が汚れている。


「ここに集まりし同志諸君。
我の存在は絶対であり正義。
それを努々忘れるな」



あの時、見逃してくれと言った朗朗。
迷っていたオレは悩んだ末に構えていた両手をおろした。
だが背後から来た存在はあまりにも巨大だった…

魔王が自ら赴いて来たのだ。

朗朗たちは魔王の力により、
あっけなく捕獲され、
三人は独房へぶちこまれた。

オレはおとがめなしという寛大すぎる判決が下された。


「殺せ」

そのたった短い一言で、
断首塔から二つの小さな頭は転がっていった。


誰もいなくなった処刑場。
オレは断首塔に上がり血の海に足をつけ、
片付けられていない二人の亡骸に近寄った。

「運命…か…」

二人の背中を撫でながら呟く消えそうな声。
オレが泣くのはこれが最初で最後だ。

オレは二人の転がった頭を抱え胴体を断首台から下ろし、
その場に静かに寝かせた。
見るも無惨な最期の姿に、
まだ涙は止まらなかった。

「なんだ…これは…」

二人の心臓付近が光っている。
原因を探るために慌てて夜々の上着をめくると、
皮膚の下から何か丸いモノが光を発しながらもりあがってくる。
ついには皮膚を破り姿をあらわす。

「これは…球体…?」

出てきたそれを両手に収さめ、
まじまじと眺める。
弾力はあるが柔らかいそれはあたたかそうなオレンジ色、
角度を変えれば冷たそうな水色へと、
見る位置から色が変化する。
直径5cmほどの不思議な球体は戀々の中からも出てきた。

オレはそれを壊れないようにゆっくりとポケットにしまい、
埋葬の準備をする為に、
ふたりを丁寧に移送した。


その頃にはオレの涙はもう止まっていた。



















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