繋いだ手


「朗朗遅いね」

窓のない八畳ほどの真っ白い部屋の中、
唯一の家具である黒いソファーに寝転がっているのは、
夜々。
同じ部屋にいる戀々に同意を求めるように呟いた。

「そういえば遅いね…朗兄ちゃん大丈夫かな…」

弱々しく口に出したのは戀々。
長いチャイナドレスの裾からのぞく両足には、
完全に皮膚が見えないほどぐるぐると包帯が巻かれている。

夜々はドクロと別れた後、
戀々を連れて研究所の部屋へと戻って来て、
珍しく大人しくしていた。
朗朗が地上での戦いに参加することは分かっていたけれど、
今日は少しだけ帰りが遅い。
こんな時は胸の中がザワザワして落ち着かない。

「戀々…覚悟しとけよ」

両腕をさすりながら夜々がソファーから体を起こし、
真顔で戀々に言った。
戀々は笑いを抑えるように小刻みに少し肩を揺らしながら夜々に向かって答えた。

「大丈夫。いつでも覚悟はできてるよ」

すると少し遠くからダダダと慌ただしく聞こえていた何人かの靴音が、
だんだんと近くなり部屋の前で音がピタリと止まる。

戀々は扉ではなく夜々を見た。
彼はソファから立ち上がり戀々の方へ歩いていく。
そして二人は横に並んだ。
合わせた目線から確信していた。

朗朗の身に何かあったんだと…。

二人はそれぞれが身に付けている黒い革のブレスレットを外すと、
それを挟みお互いの手を強く握りしめた。


するとすぐにノックもなしに乱暴に開けられた扉から、
白衣を着た研究者が3人が入ってきた。

「朗朗が左腕を負傷!至急蘇生準備に入る!今日は二人ともだ!」

二人は固く手を繋ぎ決して離すことなく部屋を出ていく。
もうこの部屋に戻って来れないかもしれない。
姿を見ることのできる最期の瞬間かもしれない…。
震え出しそうな全身を抑え込み、
溢れ出しそうな不安をギュッと握りしめる互いの繋がれた両手に閉じ込めた。

これから始まる行為の持つ、
意味の重さを物語っていた。

二人が背負っているのは運命共同体という存在理由。

そしてこの後、
四人の運命は大きく変わっていく。





 back 

TOP
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -