戦地赴く悪魔



「なんでさぁ…」

世界中ありとあらゆる青色を全て捧げたかのような晴天の元に、
なんとも緊張感のない声に話しかけられて横を向く。

「魔女と悪魔って仲が悪いんだろう?」

このタイミングでそれ聞くか?
なんて心の中で悪態をつきたくなるもの当たり前。

今まさに三人の魔女に囲まれているからだ。
その内の二人はオレが顔を知っている位だから、
かなり有名な魔女。
気を抜けば殺られるだろうことは明白。
呪いを受ければひとたまりもない。
苦しみながら死に直結、
悪魔だから死なないってのは誰かが作り出した幻想。
弱っちい人間のように一発で灰になるかもしれない。

まてよ…これは朗朗の罠か…?
魔女に攻撃する隙を与える為に俺を油断させるという…


「なにしてるの!!ドクロ!!」

ぼんやりとし過ぎていたオレの目の前には赤毛の魔女が、
長い爪を立て襲いかかって来ていた。
素手かよ。
魔法使えねーのかな…なんて悠長に考える時間なんて無かったのに…。

ヤバ…殺られる…


「これ貸しだからね」

庇うように飛び出て来た朗朗は、
後ろのオレを振り向かずに言った。
それと同時にドサリと重たい音を立て、
赤毛の魔女が地に倒れていくのが見えた。
瞼を見開きこちらを見る動かなくなった目玉に少しだけ安心を覚えつつ、
朗朗の後ろに一つに結ばれた長い髪を引っ張る。

「バカ言え。お前オレに貸しが何コあると思ってんだよ」

「あははー。じゃあ今ので全部帳消しにしてくれると嬉しいな」

「するわけねーだろうが」


緊張感を無くしたオレたちに、
残った二人の魔女は仲間の死体はそのままに立ち去って行った。


気づけばオレたちはもう少年ではなくなっているんだと痛感する。

よく笑う今の朗朗は、
泣き虫だった頃の姿からは想像出来ない位にたくましく成長していた。

笑ったり喧嘩したりの毎日を過ごす。

ただそこに魔女狩りが加わっただけ。

なんの問題もないハズだった…。

「俺はさっきの魔女追うからドクロは今鳴った爆煙の方を見てきて、
後で合流しよう」

そう言って去っていく朗朗の後ろ姿に、
胸の中がざわついて仕方ない。

さっき夜々が手を振ってたのを見たからか?

“戀々の所に帰って準備しておく”

その言葉が耳鳴りのように響いてる…。
だんだん大きくなっていくそれを打ち消すかのように、
オレは大声で叫んだ。

「朗朗!!!怪我すんじゃねーぞ!!!!」


ピタリと止まった朗朗はゆっくり振り返り、
穏やかに笑った。
その笑顔はさっきの夜々ととてもよく似ていた。

「分かった」

そして朗朗は青い空の下、
魔女狩りへと足を踏み出し消えて行った。






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