朗朗の秘密


地底を拠点とし活動する悪魔と地上に根を張り生活している魔女は、
遠い昔から相入れない存在だった。
大きな戦争は起きなかったが、
小さな小競り合いは日常茶飯事。

悪魔は魔王へ絶対服従の元、
弱肉強食の厳しい世界で暮らしていた。
弱い者は強き者を造る為の材料や実験に使われる。
一方、魔女は皆が平等に発言権を持ち単独で暮らし、
集会などの呼び掛けに応じ集まる、
そんな体制だったと聞いている。
実際魔女と話したことはなく、
教えられた知識の範囲でしか魔女のことはよく知らない。

なぜ、悪魔と魔女が憎みあっているのかなんて…
オレは考えたこともない。
魔女はみな排除せよと幼い頃から言いつけられていた。

オレに自分の思想なんて…ない。



「ドクロどうしたの?ぼんやりしてる。
牢屋に入れられてたのがまだ忘れられないの?」

肩までの黒髪がフワリと揺れて狼の耳がピヨピヨと跳ねる。
オレを覗き込む真っ赤な瞳。

朗朗の妹、戀々は珍しいね、と少しだけ笑った。

「オレだってぼーっとする時だってあるさ。
牢屋の事は思い出させるなよ。
気分が暗くなるからさ。
それにしてもオレがいない間に戀々また包帯増えたな…」

暗い地下はゴツゴツとした岩に囲まれ太陽の光もないそこは、
いつもひんやりとして強制的に体を凛とさせられいるように感じ、
気の休める隙など与えられない。

オレ達の今いる場所は大きな空洞の下に地下水が貯まっていて、
秘密基地とまではいかないが、
他の奴らはあまり来ないとっておきの場所。

洞窟の天井から水がぽとりぽとりといたる所から落ちていく。
そして水面に波紋を残しては消えていく。

オレの横に立っている戀々の方にまた視線を向ける。
細い足の膝下から爪の先まで包帯がグルグル巻きにされている。
この前会った時には無かったものだった。


「歩けるだけ、幸福かな」

笑ってはいたが赤い瞳の奥に隠れている感情までは計り難い。

「そっか…お前も大変だな…」

「……これが運命だからね」

オレは「そうだな」と言った後、
もう何も話さなかった。
続ける言葉が見つからなかったからだ。
その後はお互い静かにその場を去った。


朗朗が名前を与えられた後、オレは浮かれていた。
初めて他人との距離を縮められたことが嬉しくてたまらなかったんだ。
しかしこの世界は菓子のように甘ったるくは出来ていなかった。
成長するにつれオレに与えられる知識は機密に近いモノが増えていき、
只の知識はいつのまにか情報に姿を変え、
日々目の当たりにする現実は、
オレの心を静かに沈ませ、深く歪ませていっていくような気がした。

それにくわえ朗朗のバースト事件。
独房から出されたオレはしばらく部屋に監禁となっていて、
ようやく禁が解けまた外を歩けるようになり戀々に会った。

その謹慎の間にオレは朗朗の秘密を知った。

オレの予測は全てが正しかったのだ。

朗朗は夜々と戀々の体のパーツをもらいながら魔力を高めており、
戀々の足の包帯はこの前の研究区破壊で負った朗朗へ渡されたそうだ。

戀々は右目も抜かれており今は義眼。
もちろんその瞳は朗朗の右目に移植されている。

そしてその全ての事実を朗朗は知らされず
機密事項となっていた。






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