1172


156cmになった頃、
強力になっていく魔力とともに、
あの部屋での鳥かご生活とは無縁になっていた。
外の世界から遮断されていたとは思えないほどに、
色々な知識をや経験を頭や体に叩き込まれていく日々。

1172とはそれっきり会えなかった。
一度会いに行ったがもうそこにはおらず部屋はもぬけの殻。
違う穴を掘って探していたが遂に…
穴堀作業がバレてしまった。

オレは1週間地獄を味わうことになる…。



そんなこんなでいつもヤツを気にしながら生きていたそんな時。
思わぬ形で再会を果たす。


「ドクロ様、今日はこの者と戦って頂きます」

魔力の経験を上げる為に毎日誰かと戦っているオレの前に通されたのは、
あの日会ったヤツだった。

「番号1172、前へ」

はい、と返事をしオレの前に出てきた。
やはり眉毛をハの字にさせていたが、
悲しさではなくやっと会えた嬉しさからだと思う。
オレも同じ気持ちだったから…。


「1172はこの戦いで優秀な成績を修めた場合、
特別に名前を授与される。
心してかかれ!」


名前が貰えるのか…。
だが負ける気が更々ないのがオレの性格だった。

「本気でいくぞ」

オレの言葉にヤツの表情は一変する。
気弱そうな顔の下に隠れている悪魔の顔を。
これは楽しめそうだ…。
手加減なんてしてやらない。



「朗朗。良かったな名前貰えて」

寸での場面で力をゆるめてしまったオレは、
朗朗に負けた。
そして監視員達はドクロが負けた!と慌てて去って行き、
今はオレたち二人だけになっていた。
朗朗は力をゆるめてわざと負けたオレに怒っているようだった。
隣で膝を抱えて丸まっている。

「……うれ…うれ…ない」

膝に口唇を当てて話すからこもって何も聞こえない。
イライラしたオレは朗朗の頭をはたく。


「ちゃんと喋れ」

ブスっとした顔を上げる。


「名前貰えたから、嬉しいけど…こんなのなんか…納得いかない…」

オレはため息をついて朗朗のポニーテールを引っ張った。

「いたいいたい!何すんのー!!」


「勝ったのはお前の実力だろ。
それに弟と妹にも名前貰えたんだから、
いーじゃん」


「でもでも!」


「じゃあこれは貸しにしといてやる。
いつか返せよ」

そう笑ったオレに未だ複雑そうな顔をしている朗朗。
この後から朗朗は"ドクロを倒した逸材"として生活水準が目に見えて良くなっていき、
オレたちは誰の目も監視もつけずに一緒にいられるようになった。

朗朗の弟の夜々と妹の戀々とも仲良くなり、
オレの毎日は賑やかで楽しいものへと変わっていった。



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