魔法使いの黒猫


ある日の朝、黒猫の様子に変化が起きた。
息も荒く全く動けなくなってしまったのだ。

「これは…何だろうね…」

ラルは猫を診察しながら病気かなぁ…と呟いた。

「猫くん、どんな風に悪いんだい…あ、言葉が…」

わからないんだ…。

ラルさん!ラルさん!息がねとっても苦しいよ…!

残っている力を瞼に込めて一生懸命瞳を見開くけど彼には伝わらない…。
このまま死んじゃうのかな。
でもラルさんといれて幸せだったな…。
ぼんやりしてきた頭で考える。

「君を理解しなければ何も始まらない。
そうだな…やはり言葉は必要。
それに私はいつか消えてしまう身…」

ラルさんは樹にとまっていた白いカラスとなにやら相談してから黒猫を抱き締めると、

「私の力を君に譲ろう」

その言葉を微かかに聞きながら黒猫は気を失った。

次に目を覚ました時には…。

「ジャーン!!この姿になっていたのでしたー!!」

と明るく猫は両手を広げた。

「おぉ〜!!黒猫さんはきみだったんだねぇ!
それにJEMMYをつくったのはラルなの?」

「まぁ待って待って焦らないで、ではお話の続きを…」



そして子猫の姿から自由に動く腕2本、足2本、指10本。
二足歩行も可能。
ラルさんに言葉を伝えられるようにもなった。

「ラルさん…喋れるよ!!ワタシ喋れる!」

嬉しいと飛びはねてまわる黒猫に、
ラルは笑った。

「具合は良くなったのかな?黒猫さん」

そういえばあんなに苦しかったのになぁ…。
全然平気。
何だったんだろなぁ。

「どこも痛くないよー!大丈夫みたい!」

良かった良かったと黒猫の頭をぽんぽん叩くラルさんは、

「裸ん坊のままでは寒いでしょう。
黒猫さん、私の真似をして」

ラルさんは両手を自分の胸の高さに持ってきて、その手を前に突きだした。
黒猫も見よう見マネで同じ動きをする。
横目に黒猫のポーズを確認したラルさんは、

「欲しい服をイメージして…念じる」

すると黒猫の手からぼわんとピンク色の煙が溢れだし自身を覆い隠していく。

「あわ!あわ!け、煙がぁぁ」

「黒猫さん、見てみて」

頭を抱えてしゃがみこんでいた黒猫は、
恐る恐る目をあけた。そこには黒いマントに黒と白のボーダーの靴下、エンジ色のブーツを履いた黒猫がいた。

「すごい!すごい!」

興奮冷めやらぬ黒猫の左目にラルがそっと手を伸ばした。

「ブーツと同じ色の眼帯も」

カッコいいよ。とラルさんは笑った。

それから黒猫は魔法が使えるようになり、博識のラルさんから色々なことを学びながら、
いつもいつもそばにいた。
何年も何十年も何百年も…。

その内に黒猫はラルさんが少しづつ小さくなっていくのに気が付いた。
記憶も時々無くなっている感じも…。

ある日の夜、
突然別れの時をラルさんが口にした。

「黒猫さん、私が知っている知識は全部君に話した。
これが最後のお話だよ…」

何故、ラルさんが樹に繋がれているのか…
何故、ラルさんが樹から離れられないのか…

そして…どうして小さくなっていくのかを…



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