黒いマント


「今日はからすさんから吹き飛ばされないといいねぇ〜」

ノバリはドクロの手を握りながら、
今日も晴天の青空の下、
上機嫌でラルの元へと向かっている。
隣で憂鬱そうに眺めているのはドクロ。


「あんまりのめり込むなよー。後悔はしてからじゃ遅いんだからなー」

それを聞いたノバリはきょとんとした表情。
ひとおきして、ドクロは優しいねって微笑んだ。


「むぅ〜っ!危なくなりそうなら腕ひっつかまえて連れて帰るからな!!」


「はぁーい。
この青い空をラルにも見せてあげたいね」

少し眩しそうに空を見上げながらノバリは、
ラルのことを思い浮かべた。
あの暗い森のなかで一人。
どこにも行けずに泣きながら樹につながれている。
移動できないラルにせめてこの空の色を、
暖かさを感じさせてあげたいと思った。


「空を切りとれたらいいのにね」

ぽつりと呟く。
ラルのことで頭をいっぱいにしているノバリが、
かなり面白くないドクロはため息をつきながらも、


「ノバリお得意の絵をプレゼントしたらどう?」

ノバリの足がぴたりと止まったことに気付かなかったドクロは、
横を向いたらいるはずのノバリの姿がなくてびっくり。

後ろを振り返ると目をキラキラと輝せながら、
ノバリは興奮しているようだった。


「そっ!そうだよね!絵にすればいいんだ!
ありがとうドクロ!」

わーいとはしゃぎながら突進してくるノバリを、
どしんと胸に収めよしよしと頭をなでる。
なんて可愛いのだろうか…。


「ここでちんたらしてたら暗くなるぞ」

離していた手をまた繋ぎふたりで森の入り口へと急いだ。

空気の重くなっていくような道をぽてぽてと
二人で歩く。


「そーいえばさ、ラルのいる場所ってどこだったっけ?
てかポルカの斧も見つかんないね」


「歩いてたらその内つくよ〜
このまえもそうだったもん」

ぽやんとしたノバリの言葉に、
それもそうだな、と何やら納得したドクロ。
とりあえずポルカの斧が道端に落ちていないかを、
見落とさないように歩くことにした。

そうこうしている間にラルの呪いの樹が見えてきた。


「あっ!今日は早くついたね〜
あっラル!ゴーストの姿じゃないね」


「待てノバリ!誰かいるぞ!あの白カラスも…って!ノバリ!」

そんなドクロの忠告なんて聞こえていないノバリは走った。

そこには黒いマントに身を包みエンジ色のブーツを履いた人がいた。

そして後ろ姿のマントの人は、
目の前にいるであろうラルに話しかけた。


「…こんなに…小さくなっちゃって…」

さびしそうな声色にノバリの心は、
なぜかきゅっと締めつけられた。

樹に止まっていた白く大きなカラスが、
ぎゃー!っと鳴いた。
まるでラルにノバリの訪問を知らせるように。

鳴き声で振り返ったマントの人は、
人ではなかった。
猫の耳に猫の鼻。
ちらりと唇の隙間から見えるキバ。
左にブーツと同じエンジ色の眼帯。
右の大きな瞳は金色で瞳孔は縦にのびている。


「おや〜キミはだぁーれ?」

興味深そうにノバリを眺め、近づこうと一歩踏み出したところで、
ノバリの前に飛び出したドクロ。


「ノバリに近づくなよ…」

グルルと喉を鳴らし威嚇する狼のようなドクロに、
目の前のマントは言った。


「なーんてね!全部知ってるヨ。
ノバリちゃんにドクロくん」

初めて会ったはずなのに。
コイツは一体誰なのか?
身体中の毛が逆立つのを感じるドクロに反して、
ノバリはやはりいつもの調子。


「ぼくのこと知ってるの?
でもぼくはキミのこと知らないんだぁ。
だから教えて?キミのこと」

ノバリの間延びした声が暗い森に消えていく。


「そうだねー
ここまで来たんだから。
教えてあげましょーかねー!」

笑いながらマントの人は言った。


「どうしてJEMMYが出来たのか」








 back 

TOP
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -