斧はどこへ?



「斧も見つけられずに帰って来ちゃったの?」

ニッカの可愛い顔してチクリと刺してくるような質問に、
無表情なドクロの隣で、
しょんぼりしたノバリが、
こくんと一つ頷いた。

ラルと名乗ったゴーストが泣いた後、
樹にとまっていた大きな白いカラスが、
ぶんっと羽を一振。
同時に凄まじい風に煽られて、
ぴゅーんと飛ばされた二人は、
気が付いた時にはポルカ逹と別れた、
あの古ぼけた木の前に倒れていた。

そしてしょぼしょぼとビスケットの庭に帰って来たのである。

庭にいたのはIQの代わりにニッカ。
ポルカとビスケット。
ショコラは調べものがあるからと研究室に戻っていた。
ニッカはポルカから一通りの話を聞いていて、
帰って来た二人を見つけ声をかけた。


「あそこに呪われてるヤツがいて、
それで森全体がおかしくなってんの」

変な呪いもらってないよなー!と、
クルクルと回りながら全身を確認しようとするドクロ。


「可愛いダンスだね」

ポルカが笑いながら言った。
それにつられて


「ほんとだドクロ可愛い」

茶化すように笑う二人に軽く苛立ちを覚えつつも、
ふんっと鼻で笑い返したドクロ。


「お前らは呪いの恐ろしさを知らないからな!
軽くみてると永遠に苦しむぞ」


と言ってみたものの、
二人はキャッキャとはしゃぎながら、


「ドクロ異常ありませーん!」

「いつものドクロでーす!」

ドクロの周りをかけまわった。

最終的にうるさい!とゲンコツをお見舞いされ、
やっと静かに落ち着いた二人。


「歩きまわったんだけどね、
斧はなかったの…」

樹に繋がれたラルのことと、
見つけられなかった斧のことを、
まだ真剣に考えていたノバリ。


「もしかして二人が通る前に誰かが、
先に拾ったのかもしれないよ?」

ドクロにくらったゲンコツ部分を押さえつつニッカが言った。


「それはあるかもしれませんね」

お茶を運びながらニッカの話に、
相づちを打ったビスケットは続ける。


「今まで、そんな場所あったことすら知りませんでした。
JEMMY周辺はほとんど博士が調べていたので…
でも隠されていたはずのゴーストの呪いが、
何らかの影響により弱まっているのではないでしょうか?
だから入り口が見つかった」


「呪いが弱まるなんてことあるわけな…なっ…!」

言葉に詰まったドクロは、
この前朗朗が言っていたオルガという魔女を思いだした。


「あっ!きっとオルガが呪いを解きに来てるんだよ」

思いだしたドクロの隣で、
ポルカがそうだ!と叫んだ。


「オルガってなぁに?」

見事にハモったノバリとニッカの可愛らしい声が、
ほわんと空気にのった。


ドクロとポルカから、
大方の事情を聞いたニッカとノバリ。
その横でビスケットはお菓子の準備を始めている。


「ドクロ殺されちゃうの…?」

眉をハの字にさせたニッカが心配そうに尋ねる。


「会ってみないと分からないなぁ」

テーブルについたドクロは、
ビスケットが用意したほかほかのホットケーキに、
もう目が夢中。
ニッカの心配する声もあまり届いてはいなかった。


「じゃあ、
その内ここにも来るのかなぁ。
おっかない人なのかなぁ。
恐いなぁ…」

不安なニッカをよそに、
今度はポルカもテーブルのホットケーキにしか、
興味がなくなっていた。

なんという緊張感のなさ…と呆れたニッカは、
ノバリを見た。

するとじっと真剣な眼差しでドクロを見つめていたノバリは、
唐突に叫んだ。


「ドクロはぼくが守ります!!!」

突然の守ります宣言にホットケーキを食べていたドクロはむせかえる。

喉に詰まらせ地面でバタバタしているドクロの背中を、
ビスケットが優しくトントン叩いている。


「ノバリ王子様みたい!かっこいい!」

隣でニッカは目を輝かせて、
素敵!と興奮している。
それを見たポルカは焦りながら


「ボクはニッカを守ります!」

なんの脈絡もなく宣言したもんだから、
その場がシンっと静まりかえった。


「私たぶん、関係ないから大丈夫だよ」

なんとも冷めた返答にポルカは少しへこんでしまう。
ポルカの恋心はニッカに届くのだろうか…。


「あきらめずにラルの所に、
また行こうとおもう」

ノバリは決意を込めて、
ぐっと右手を力強く握りしめた。


 back 

TOP
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -