入り口



ある日のこと。

ポルカが興奮し、
すごい勢いで斧を投げてしまったもんだから、
凶器と化した斧は、
キコリーズの家の屋根を破壊した。
その穴を修理する為にIQを呼び、
直してもらった午前中の終わり頃。

IQは工具をしまいビスケットの庭に戻るという。
この前ドクロが魔法で壊してしまったビスケットの庭の柵を直すために。

ありがとうとお礼を言って、
屋根を壊したことを反省しながら、
ポルカはショコラに提案をした。


「昨日ニッカと森に遊びに行ったら、
見たことない道があってさ、
ちょっと進んでみたら、
いい木が生えてたんだよ!
今から切りに行こうよ!」

輝いたピンクの瞳が、
木の素晴らしさを物語っている。
ポルカは質の良し悪しの判断や、
木目の美しさなどに見る目があり、
大の木好きなのである。

そんなポルカが言うのだから、
本物なのだろう。


「じゃあ、今から切りにいきますかね」

ショコラの了解の返事を合図に、
いつも持っている斧を肩に担ぎ、
斧の尾に付いている金色の鈴をリンっと鳴らし、
キコリーズは森へ入っていった。

数十分歩いたところでポルカが立ち止まる。


「ここが入り口」

なんの変てつもない枯れそうな年期の入った木が一本。


「…なんか魔法の感じが…するような…しないよーな」

少し怪しさを感じながらもショコラはその木を軽くなでた。


「この木が目印でね、
真っ直ぐ進んでくの」

そう言ったポルカはスタスタと先へ先へと奥へ進む。
後をついていくショコラだったが、
森の雰囲気が変わっていくのに気付きはじめた。

木を曲がる前は、
緑の木々が風に揺れ、
隙間から木漏れ日が降っていた。

しかし今は、
光りはどこへいったのか、
何かに遮断されているのか、
まったく日光が当たらない。
だが、周りや風景はしっかり見渡せるのだ。

木々の色合いも幹や枝が濃紺で、
葉っぱも紫色やら、
見たことないような暗い色。
こんな所に素晴らしい木があるのだろうか??


「おい、ポルカ。
本当にここか?
気味が悪いぜ」

奥へ行くのが段々嫌になってきたショコラ。


「うーん…昨日はすぐに木があるところに着いたんだけどなぁ。
もう戻ろっか」

歩き損をくってしまった二人は、
きた道を戻ろうとした、
その時。


「う…うっ…」

消え入りそうな泣き声が聞こえた。

声がした方を恐る恐る振り返え…
らなかった二人は、
一目散に駆け出した。


「ユーレイだ!!ユーレイだ!!」


「ポルカが道を間違えるからだぞ!!」


「間違えてないもん!入り口はあってたもん!!」


「「悪霊たいさーん!!!」」




「んで?泣きながら戻って来たのか」

キコリーズが必死の形相でダルマのようにビスケットの庭に転がり込んできて、
ようやく落ち着ついた二人から話を聞いたIQはキコリーズの様子を見て笑った。


「ショコラもゴーストみたいなもんだろ?
それを泣き声だけで怖がるなんて」


IQは煙草の煙をすーっと空に散らせる。


「いやいやいや、恐いもんは恐いんだよ。
ゴーストじゃあないけどね!」

未だに冷や汗の引かないショコラは、
心臓バクバク。


「昨日ニッカとだったら、
ちゃんと行けたのにな…んなっ!!」

幾分ショコラよりは落ち着いているポルカは変な声を上げた。


「おい、どうした?ポルカ?」

ワナワナと震え出したポルカ。


「んない!!ないない!あそこに斧忘れて来ちゃった!!」

しん、とした空気が一瞬かすめた。
もちろんIQもショコラも斧を忘れて来たポルカでさえも、
さっきの所へ行くなんて考えたくもない。

そこへ希望の光りがやって来た。


ノバリとドクロである。


「みんななにしてるのー?」

間延びした声が暖かな陽気に溶けた。
不思議な森と奇妙な泣き声の話を聞きいたノバリは、


「ポルカの斧、取ってきてあげるよー」

勇敢な返事をした。


「ノバリが行くならオレもー」

魔王を封印するくらいのバカには恐いものなどありはしない。
ドクロはノバリが行くのであれば、
どこにでも着いていく。

ほっとしたポルカは、
二人を森の入り口の木まで案内した。


「なんか魔法の感じがしたから気を付けろよ」

言おうとしたショコラだったが、
二人は魔法使えないし、
言っても意味ないな、
と結構重要なことは伝えず、


「がんばれよー」

と声援だけを送った。

ノバリとドクロが森を歩いていき、
ある場所にさしかかった瞬間に、
フッと二人の姿が消えた。


「ねぇ、ショコラ。
今、ノバリとドクロ消えたよね?」

目をこすり凝らした先には、
やはりもう二人はいなかった。


「魔法の道…かもな。
何かが封印されてるか、
呪われてるか…
ちょっと調べてみようかな」


仕事が増えたと呟きながら、
ショコラはビスケットの庭へ向かう。

ポルカは自分の斧を取りに行ってもらってる身分なので、
待っていようかと思ったが、
いつ帰ってくるか分からないので、
ま、いっか。
とショコラと一緒に庭へ戻ることにした。


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