ニッカの涙


ドタドタと三人のせわしない足音が、
IQの家に響きわたる。


「騒がしいね、どしたんだろ?」

ニッカのベッドの横にいるポルカは、
この足音が気になった。


ガチャりとノックもなしに勢いよく開いたドアから、
ノバリが転げるように入ってきた。
その後ろにショコラ、ドクロと続く。

「どっ!どしたの?みんな!?
ショコラとドクロまで!」

お見舞いなんて一度も来たことないショコラとドクロに驚くポルカ。


「ポルカ、ノバリの綿毛と、
ドクロの目玉を使ってニッカを治療してみる」


「えっ!ドクロ、目玉使っていいの??」

あのドクロがニッカの為に!!
天地がひっくり返えるんじゃないかと心配になるポルカをよそに、
ショコラがニッカに事情を説明する。
話しを聞き終えたニッカは、
みんなの予想に反した答えを口にした。


「みんなの…気持ちは…とっても嬉しい。
だけど…だけどね…
私はもう死ぬ準備は出来てるんだぁ…
ドクロの大切な目も、
ノバリの体の一部も、
もらえない…
ごめんね…」


力なく笑う、
そんなニッカにノバリが食って掛かる。


「だめ!ぜったいにだめ!
ニッカがなんて言おうと、
ぼくらはニッカを助けたいの!!
だから…準備ができてるなんて言わないで!!」


しん、となった部屋。
うつ向いたニッカの嗚咽が途切れなく聞こえてくる。


「ごめんねっ…ノ…バリ」

小刻みに肩を揺らしながら謝るニッカを、
ノバリは優しく抱き締めた。


「ごめんなんていらないよ。
だから一緒に生きよう…
お願い…」


きゅっと力ない少し震える両手で、
一生懸命ノバリを抱き締め返した。
それがニッカの本当の気持ち。


そのあとは感動したポルカが、
ドクロに抱きついて泣きじゃくり、
「離せ離せ」と顔を押されながらようやく離れたドクロの服には、
ポルカの涙と鼻水が大量についていた。


「ニッカ、ドクロの目玉はニッカの目に入れないといけない、
痛みは感じないように付け替えるけど、
その後に、
どんな拒絶反応が起こるか想像出来ないよ。
その覚悟はある?」

ショコラがニッカに問う。

短かった命を延ばす為に、
背負わなければならない痛み。
運命を曲げるには、
大きな代償が必要ということ。


「大丈夫、
私もっとみんなと一緒にいたいから…がんばるよ」


笑うニッカがキラキラ輝いて見えた。
目玉の入れ替えは血を伴うので、
ショコラの部屋の研究室でおこなうことになった。
善は急げとニッカをドクロがおんぶして連れて行く。


「ドクロが大きくなってて本当良かったねー」


「ああ、感謝しろよ」


ポルカが嬉しそうに笑う。

(でもボクがおんぶしてあげたかったな…)
その気持ちは心の中にとどめたポルカだった。


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