秘密


「この町は、死に近い者しか入れない。
それが悪魔だろうと動物だろうと、
人間だろうと。
それに加えて、
もうひとつ条件があるんです」

ビスケットの話に真剣に耳を傾けるニッカ。
到底想像も出来ないような話が続く。


「そ…その条件とは?」

ゴクリと生唾を飲むニッカ。


「その条件は、
身体の中にある核が強い者」

また出た核という単語に、ニッカは首を捻る。

それを見たビスケットは、クスクスと笑う。

「核とはね、
心臓の中にある光る球体ことなんですけどね、
これはみんな違っていて、
小さかったり、光が弱かったり、
核自体が存在しなかったりするんです。
この核の強い者が、
この町で死んだ後
…生き返るんです」


ビスケットの放った「生き返る」との言葉に驚き過ぎて、
一瞬息が出来なかった。


「ニッカ、息してください。
生き返った時、死んだ時の姿になるとは限らないんです。
例えばIQ。
IQは死んだ時は小さなチワワでした。
生まれ変わって今の姿になったんですよ。
ポルカもショコラも同じ」

私はIQとポルカとショコラを見た。

そうだ彼らはここに来た時は、
ただのチワワと悪魔に仕えるはずだったコウモリだと言っていた。

彼らは一度、死んでいるんだ…。


「じゃあ、じゃあ!
ビスケットは?
元は人だったの?」

ビスケットは唯一人間の姿だから、何から生き返えったのだろう。


「私は…生き物ではないんですよ。
私は、博士から造られたロボットです」


………予想もしていなかった返事に驚愕してしまった。
まさかロボット!?
えっロボット!?


「どう見てもロボットには見えないよ…」


「言っておけば良かったですね。
でも言うタイミングもなかったですし」


はははと笑うビスケット。


「もう何を言われても驚きません」

なんだかいちいち驚くのが馬鹿らしくなってきた。


「そうそう。
受け入れろ。
驚くだけ損するぞ」

なんて横からショコラがちゃちゃを入れる。


「話を戻しますね、
初めにここを見つけたのは博士でした。
魔女から命を狙われていた博士は、
魔女も悪魔も動物すらいないこの場所で静かに暮らすことに決め、
私を造ったんです」


1人はやっぱり淋しいかったのかな…。
今も1人ゴーストになって淋しい思いをしてるんだろうな。
と白旗さんを思うと悲しくなる。


「そしてある日、
1匹の羊が町にやって来ました。
よろよろとふらつく足どりだったんですが、
ペタリと座りこんだと思ったら、
パッと立ち上がって来た道を引き返して行きました。
ひとつの綿毛を残して。

その綿毛を博士が拾った瞬間、
強い光を放った綿毛が……
ノバリです」


えっええー!!

「今、核の話してたじゃないですか?!
心臓関係ないっ!
わ、綿毛がノバリ!?」

もう驚かないと、
さっきこそ誓ったのに、
あまりに突拍子もない話しに思わずツッコんでしまう。


「あっ、そうでしたね。
言い忘れてました。
ノバリだけは特別だったらしくて、
何故か綿毛から生まれたんですよ。
それ以降町にやって来て生まれ変わった者達は、
すべて心臓の核から生まれ変わってます」

最初にノバリの話をしてほしかったな…
なんて思ったニッカ。


「完璧に生き返り、
生まれ変われない者達がほとんどでした…
ここにいる彼らは稀なんだと思います」

ビスケットが光景を思い出したように、
悲痛な面持ちで喋る。


「その形を留めていられず、
崩れていく子達を何人も見てきました…」


この町には6人しかいない理由が分かった気がした。
それはとても悲しい理由。
本当に強い核でなければ生き返れない現実。


「そしてあとひとつは、
この町に入り、
ここで生き返えった者は町から出られないんです」

出られないと言い切ったビスケットに私は質問した。


「なぜ…出れないの?」

ビスケットは少しためらいながら話し始めた。


「…博士が…言葉は悪いですが、
皆にそういう呪いをかけたんです。
自分が死んだ後も、ひとりにならないように。
それは私達全員が賛成してのことです」


やっぱり白旗さんは淋しかったんだ。

死ぬのが怖かったんだ。

そう思ったら、
だんだん私も悲しくなってきてしまって、
泣いてしまった。

白旗さんに貰った薬を握り締めて。

私も死ぬのが怖い。

きっと白旗さんは、
自分を忘れてほしくなかったんだと思う。


「そして続きが」
と言ってビスケットが話し始めたので、
流れていた涙を無理矢理とめた。


「ノバリを除く全ての者が心臓の核から生き返ります。
ですから…
ニッカや博士のように病気で心臓が死んでしまう場合。
核が死んで生き返れないんです」


ビスケットは悪くないのに、
「すみません」と小さく謝った。

そうかだからさっきショコラが、
「核が異常に強くて奇跡が起きれば」
と言っていたのか理解した。

私が生き返りまた皆と暮らすことは、
無いに等しいということ。

ここの皆に会えた幸せで、
人生に色が付いた気がして。

楽しくてしかたがなかった。

寿命が短いことは小さい頃から分かってたのに、
まだ生きたいなんて。
私はいつからこんなに欲張りになっちゃったんだろうな。


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