黒猫?


先程IQから、


「手伝ってもらうことねーから、
遊び行っていーよ」

と言われたのでブラブラ目的もなく、
1人で散歩していた。

ぼんやり頭の中で通り過ぎる思い出。

ショコラの髪を切ることに失敗した私。

私は髪が伸びるのが早いから大丈夫だもん。
そう思い早いものであれから2ヶ月経った。

町の秘密も暴けたわけでもなく、
いつもの平和な毎日を満喫する日々。

前方の道端に見覚えのある黒髪がいた。


「ドクロ、何してるの?」

ドクロは道端に生えている大きな木の根元に寝転がっていた。
私の声に反応してドクロはチラリと顔だけあげて、


「あれ、IQの手伝いは?」

と質問返し。

私はドクロに近寄り隣に腰を下ろした。


「今日は何もないから、遊んでおいでって」

「ふーん」

ドクロは私の答えに、さも興味なさそうに相槌をうつ。

ドクロはもそもそと体を起こし、
胡座をかいて木に寄り掛かった。


「ねぇ、今日ノバリは?」

いつも一緒なのにめずらしいね。
そう言ったらドクロは正面を向いたまま。


「いつもとは限らないの。
オレだって個人なんだから」

いつも一緒にいることが多い2人。
喧嘩でもしたのかな?そんな考えが浮かぶ。


「ノバリは、ビスケットが市場に行ったから、
帰ってくるの待ってるの」


「ドクロはここにくる前は猫だったの?」


私は唐突に気になってた疑問をぶつけてみた。

正面を向いていたドクロは、
バッと効果音がつきそうな勢いで、
私を睨む。


「…その話、誰から聞いた?どこまで聞いた?」

そう言ったドクロはなんというか、
体全体から黒いオーラみたいなのが、
出てるのが見えた。
…怖い。

私は少しためらいながらも、
ショコラ、ポルカ、IQから聞いた話を、
ドクロに説明した。


「ふーん。あっそ」

その声とともに、
ドクロから感じた黒いオーラが瞬時に消えた。

話をした内容が「なんだ、それだけか」
と言わんばかりの反応に私は、
仲間はずれにされている気分に、
少し落ち込んだ。

次はドクロが口を開く。


「オレは猫じゃない。悪魔だ」

ドクロから信じられない言葉が飛び出した。
私は驚きで体も思考も全ての働きが停止した。


「…あくま?ドクロが?」

やっとの思いで口を動かす。


「悪い?
耳と尻尾は生まれた時からあるんだよ。
悪魔つかまえて猫ですか?って、
そーとー失礼な話じゃない?」


「私悪魔みたのはじめてで…
ドクロはなんでここにいるの?」

答えてはくれなさそうだけど、
聞きたくてしょうがなかった。

ドクロは私を見ながら大きな左目を、
これでもかと細めた。

あ、馬鹿にしてる時の目だ!
今日はやたらと露骨だな…と、
ドクロの視線を真正面から受け止めた私は思った。


「はじめてじゃーないよ。
朗朗のヤツも悪魔だ」

あっ、やっぱりそうだったんだと納得した。
ドクロは続ける。


「オレはここに来た時、
瀕死の状態でそれをノバリが助けてくれて、
そのまま、ずっとここにいる事にしたの」


「じゃあ、じゃあ!
ドクロは魔法とか使えるの?!」

私は興奮しながらドクロに聞く。

ドクロは
「ちかい!離れろ」
そう言いながら私の額を片手で押す。
私は深呼吸をしドクロから一旦離れた。
落ち着いた私を見てドクロが喋りだす。


「魔法は使えない。
右の眼球に力の全てがあったんだけど、
眼球無くしちゃったからね」


右の眼帯をトントンと軽くたたいた。

眼球が無いことを、
落とし物しちゃったと言わんばかりに、
軽く口にするドクロに少しゾッとした。

魔法が使えなくて残念だったな。
そうドクロは笑った。

大きな木が風を受け葉はゆらゆら揺れ、
それを同じくして影も揺れる。

私は言葉をなくし沈黙。
ドクロは目をつむって沈黙。

先に口を開いたのは、私だった。


「もし悪魔の力がもどったらどうする?」


私の質問に、
先程の馬鹿にしたような細めた目でドクロは、


「何そのつまんない考え」

と一言。


「も、もしもの話!気になったから」


うーんと唸りドクロは、


「…3日間ノバリに近づかないでくれるなら教えてもいいよ」

この条件をのまないと、ダメ。
3日は絶対無理だと判断した私は、
打開策を思いついた。


「…教えなかったら、
ノバリにもっとくっつく!」


「なっ…いい性格になったな。。
ああーぁいいよ、オレの負け。
1日にしとく」

条件は緩和されたが、それでも1日は長いなぁ…


「分かった。1日頑張ってみる」


「オレの力はね、
ニッカが大きく想像してる、
さらに200倍以上は強力よ?」


「えー本当!?
じゃあドクロって悪魔の中でも
すごい悪魔だったの!?」

もう力のすごさが、
想像できない。


「んーそうね。すごーい強かったよ。
でもここに来て、
そんな力あってもしょーがないって、
力無くして分かったの。
もしまた力が戻っても、
ここにいる限りは使わないだろうな。」

ドクロは真剣な眼差しで、
自分の包帯だらけの両手を見ていた。


「そっか。
ここでは使う必要がないんだもんね」


話しに区切りがついた時、
遠くから聞き慣れた声がする。


「あー!みつけたー!二人とも探してたんだよ〜」


「あわっ」

すごい勢いでやって来たノバリはニッカを抱きしめた。
(いや…タックルだと思う…)


「あっ!
ニッカの嘘つき!嘘つきー!!
オレにいま力があればぁぁぁ!」


早速約束を破ったニッカにドクロが憤慨する。


「違うよぅ…避けきれなかったんだよぅ… 」

私は力無く弁解する。

「ねー。なに喋ってたの? 内緒話?」

興味津々のノバリは、
私とドクロを交互に見る。


「ちがうよ。
私たちどれだけノバリが大好きか話してたの」


「そーそー。だからニッカ、
ノバリから離れなさい」


「ぼくも2人とも大好きだよー。
あっ、手つないで」

そう言ってノバリは右手を私に、
左手をドクロに差し出した。


「おやつが出来たから、
ビスケットに呼んでくるように言われてたの」

私とドクロは出されたノバリの手を、
それぞれ繋いだ。


「ノバリの手、
柔らかくてあったかい」


「そだな」


「ふたりの手もあったかいよ」


私たちは、
3人で仲良く手をつないで、
ビスケットの庭へ向かった。

風が気持ちよく吹くおやつ時の話。




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