対決


そのころキコリーズの裏庭にて。


「きょーは暇だね。
ビスケットの所に行ってみる?」

ポルカはゴロンと芝生に寝転がり、
高い空を見ながら提案した。


「そーだな…いや待てまて。
屋根の修理をしなきゃいけなかった」


積みあげた丸太に寝転がっていたショコラは、
やらなきゃいけない事を思い出し、
ガバリと起き上がる。


「あっ!そうだったね!
…あっあれ、ニッカじゃない?…ニッカかな?」

ポルカはニッカらしき人物を見つけ、体を半分起こした。
が、
ポルカの知っているニッカは、
汚いワンピースを着て、髪がボサボサのはずだったのに。
余りにも綺麗になっていたので、
ニッカかどうか分からなかった。


「ビスケットから服もらったんだよ。
髪はオレが切ったから、
可愛くなっ…!!」


ショコラがポルカの方を向いて話してる時に、
ものすごい勢いで走って、
積み上げてた丸太を登りニッカが、
自分の目の前にいた。


「ぜっんぜん!可愛くありません!!」

目の前のニッカは、かなり怒っている。


「なに怒ってんの? 可愛くなってんでしょ?」

ニッカの発言が不服だったショコラは心外だと口を尖らせる。


「これはあのあと、
ビスケットが直してくれたんですぅ!
みんなに笑われて大変だったんだから!」

今にも襲いかかってきそうなニッカに、
せっかく切ってやったのに、文句かよ。
とショコラもムッとする。


「もう頼まれても、土下座しても
ぜったい切ってやんないからね」


(えーーーー!人の話聞いてた!?)

ニッカは呆れはてた。

コイツには何を言っても無駄だと悟ったニッカは、
今のショコラの言葉をさらりと流しひきっつた笑顔で


「ショコラも髪が伸びてるから、
私が切ってあげます」


「は?
オレ伸びてないって!
なっ!ポルカ!伸びてないよな!」


目が据わっているニッカを前に、
ようやく何しに来たか分かったショコラは、
いきなり慌てだした。

芝生の上に胡座をかいて2人のやり取りを見ていたポルカは口を開く。

「うーん。
前髪が少し伸びたかな?」


「んなっ!」


「ほらやっぱり!」


「少し伸びたなぁー。って思ってた」

ポルカめ!オレを売りやがったーー!
心の中で叫びにさけんだ。


「ふふふ。
私が切ってあげます。
ハサミも用意してるんで」

後ろから得意げにハサミを取りだしたニッカは、
おとなしくしろと言わんばかりの眼差しでショコラを見つめる。


「あぶない!あぶないからしまえ!
お前ぜったい不器用だろ!」


言い当てられてドキっとしたニッカは、
少しひるんだ。
その隙をついてショコラは、
ひょいっと丸太から降りる。


「あっ!まって!」

ニッカもショコラを追って降りようとした時、
足を滑らせた。

「あぶない!」

ポルカが叫ぶ。

グラっとして丸太から離れてしまう感覚に、
恐怖を感じたニッカ。
地面に落ちる想像だけで痛さを感じる。

地面に当たる面積を少なくする為、
体を丸め両目をきつく閉じ、落ちるのを待つ。

(もうだめだ)
そう思った時。

地面ではなくショコラの腕の中にいた。


「あぶない。あぶない。
お前が大きくなくて良かったよ
大きいかったら絶対助けてなかったけど」

恐る恐る見上げた顔は少し赤かったが、
とても頼もしかった。


「…ありがと…ございます」

腕の中でお礼を言った。


「どーいたしましてって。オイこの手はなんだ?」

ニッカの右手は、ショコラの前髪をガッチリ掴んでいた。


「いや…髪切ろうと思って」


「お前何考えてんだよ!
せっかく助けてやったのに!
もうなんかあっても助けないからな!」

そう言ってニッカを腕から下ろし地面に置いた。


「あだだだだ!離せ離せ」

地面に下りる時でも前髪を掴んでいるニッカ。
ショコラも堪忍袋の尾が切れたのか、
ニッカのホッペをつねる。


「いだだだだー!ひゃなしゅてー」


「お前が離せ。
ハサミおけ!あぶないから!」


「いやらぁ〜」

涙目になるニッカ。
それを面白そうに見てるポルカ。

その時、

「ポルカ〜。 遊びにきたよ〜。
あっ、ニッカもきてるー!」

ノバリとドクロがいいタイミングでやって来た。


「なにしてんだ?あの2人」


「話せば長くなるから落ち着くまで見てよーよ。
すごい面白いよ」


「ぼくもニッカと遊びたーい」


「まぁまぁ、ノバリ。
終わるまで見よーよ、なんか今行ったら、
間違えて髪切られそーだし」

決着のつかないニッカとショコラを
ポルカとノバリとドクロは仲良く座って観戦した。

とても穏やかなお昼前のお話。


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