写真


髪を切ってもらって、
うぬぼれかもしれない、
いや多分きっと、そうなんだけど…
自分が少し可愛くなった気がしてた。

私も女の子なんだ。
初めて思えた。

気持ちは
意識無意識に関わらず外見に表れるというけど、
例にもれず私もそうだったみたい。

ビスケットの家について緊張からか、
みんなの前に出るのをためらってしまい。
家の影からみんなに気づかれないように、
コッソリと庭をのぞいた。

テーブルをはさみIQとビスケットはオセロをしている。

ノバリは、
そのテーブルの横に生えている、
大きな木の枝の先を眺めてる。

ドクロは、
その木の幹に背中を預け木を眺めてるノバリを 、
ぼんやり見つめている。

穏やかで暖かな日和。

私の目に映るのは、
平和としかいいようのない光景。
心の真ん中がジーンと温かくなるのが分かった。

でも、ふいに頭のスイッチが現実に切替わる。
髪を切ったのが一気に恐ろしいくらい恥ずかしくなってきて。
心臓がドキドキいつもの3倍くらい早くなった。
なっ…なんだか苦しい。

いつまでもこんな所に隠れていても
しょうがない!

意を決してみんなの所に行こうと、
一歩踏み出した時。


「あー!! ニッカー! おはよ〜」

木をただ眺めていたはずのノバリに見つかった。

みんなの視線は一気に私に向けられる。
何か言わなきゃと焦る私。


「ぶっ!!何それ?」

ドクロが厭味な感じで吹き出した。


「ギャハハハハハ! どーしたそれ?」

IQから笑われ。


「えー。ニッカはどんな髪型でも
かぁ〜いいよ!」


…ノバリそれは褒めてないよ。

多大なるショックで動けなくなってしまった私。
心内のダメージは自分のうぬぼれも重なり
再起動不能まで追いやられる。


「こら、みんな笑わないの。
ニッカこっちにおいで、
切り揃えてあげるから」


俯いた私の頭を優しく撫でながらビスケットが声をかけてくれる。

そのまま手を引かれ、
ビスケットの家の中に招き入れられた。一方残された3人はというと…


「それにしてもヒドかったねぇ
何をどーしたらあーなるんだろ」

ドクロはニッカの髪型を思い出しながら呟く。


「キコリーズの家に行ってもらったから、
ショコラに切られたんだろ」

IQがタバコを吸いながらドクロに言葉を返す。


「あぁ、ショコラか。
悪気は全くないんだろうけど」


「ショコラぶきっちょだもんね〜」

IQの隣に座ったノバリは嬉しそうだ。
ドクロは立ち上がり、IQの向かいに座った。


「オセロやろ?オレもちろん黒ね」


「いいよ。絶対負けねーよ」

IQとドクロ2人の真剣勝負がはじまった。

ノバリは白と黒の丸い小さな駒が裏がえったり
戻ったりしていくのを 、
のんびりながめながら、
ニッカが戻ってくるのを待つことにした。


ビスケットの家は2階建て。
リビングに通されたが、
聞いていたレストランという感じは全く受けず。

そこにあるのは大きな長方形のテーブル1つと
6脚の椅子。
ビスケットはその中の1脚の椅子を引いて、


「ハサミ持ってくるから、座って待っててください」

そういって私を座らせてからビスケットは2階に上がって行った。

改めて部屋をぐるりと見渡す。

壁は真っ白で床は木目、
窓枠や柱の出っぱりある部分は全て、
すこし柔らかい赤い色。

無駄な家具や雑貨はほとんどなく、
目についたのはたくさんの写真。

額縁に入れられたモノや写真立てに入ったモノに、
壁にもピンでとめてあるモノも。

知り合った町の顔が被写体の大部分を占めているが、
中には知らない顔もあるようだ。

近づいてよく見ようと思い立ち上がろうとした時


「どうしました?」

2階から降りてきたビスケットに声をかけられた。
振り返った私は何故か悪いことをしてしまった時の、
後ろめたい気持ち。
別に悪いことしようとした訳じゃないのにな。


「あ…いや、写真が多いなぁって」


「あぁ。
私は写真を撮って飾るのが約束なんです。
さぁ、髪を整えましょうか」

約束…。
誰との約束かは聞かなかった。

そしてビスケットはハサミと一緒に持ってきた鏡を私の前に置いた。

……。絶句。

鏡に写る人物が自分とは信じたくなかった。
なっ…何だよ…この頭。
私は、ショコラは信用できないな…と思った。


「大丈夫。キレイになりますから。
切ったのはショコラでしょう?
彼は悪気はなくて親切心でやったんですよ。
でも彼は思いの他…不器用で」

ハハと軽く笑うビスケットに
私もハハハと苦笑い。

私はどんな頭になっているかというと
前髪の短い所は眉毛の上。
でも長い所もあったり。
後ろもショコラ的には揃えたらしいが、
右側は頬の横でパツと切れてるかと思えば、
左側は肩までつく長さだったり。
とりあえず全てがガッタガタ。

あの時ショコラに

「はい、できたよ」

と言われたのを思い出した。

(…なんにも出来上がってないじゃん!)

心の中で文句をたれた。


「髪が終わったら
次は洋服を合わせましょう。
ニッカの服、ボロボロですから」

私の髪を整えてくれながらビスケットは優しい声で言った。

そしてニッカの全てがキレイになり、
みんなが驚くのは、
このあと数分後のことだった。


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