自己紹介


名前も決まり、ふと空を見れば陽も傾きはじめていた。

私はどこで寝泊まりすればいいのだろう…
そんな事を考えていたら庭の入口から不思議な人物がやって来た。

すごく息をきらしながら。


「あっドクロ。さっき別れたぶりだねー」

ノバリが間の抜けるような挨拶をする。

ドクロと呼ばれた人物は、黒く長い尻尾に、人間でいう耳がついている場所には、
顔に対しては少し大きめな猫の耳がついていた。
右目は眼帯を付けていて左目は真ん丸でクリクリしている。
私から見てとても愛らしい外見をしている。
ドクロは私たちが座っているテーブルに来て
言った。


「ノバリ、お土産は朗朗に返した方がいいよ。
災いの元だから」

[災いの元]と言った私を見ながらドクロは続ける。


「朗朗が持ってくるものは、ろくなものじゃない」

ノバリもわかってるだろ、と。

私は
やっぱり
ここにも居てはいけないのだ。
名前も貰った。
友達も出来た。
これ以上、期待をしてはいけなかった。

優しさはこの世でもっとも恐ろしいものだと
分かってたはずだったのに。


「なんで、そんなこと言うの?
ねぇドクロ 一人は寂しいでしょ…?
ぼくは一人じゃ生きていけないもの。
それはドクロも同じじゃないの…?」

ドクロは、しまった。
という顔色になったが負けずにノバリに話しかける。


「そいつをここに置いたら悲しむのは、
ノバリお前なんだぞ!分かってるだろ」

私には二人が何でこんなに辛そうな顔をしているのかは分からない。
けど原因が私にあるのは痛いくらいに理解している。
私に出来るのは ただひとつ。


「あ…の…んぐっ」

喋ろうとしたら後ろから口をふさがれた。
びっくりして後ろを見るとIQがいた。


「黙って見てろ」

と低い声で小さく私にだけ聞こえるように言った。

私はコクリと頷いてまた、
目の前のノバリとドクロに視線を戻す。


「ぼく、ちゃんと分かってるよ。
朗朗がニッカを連れてきた時から。
でもぼくは…ぼくは…
友達になったんだよ…」

ノバリとドクロは黙り込んでしまった。
そして先に動いたのはドクロ。

ノバリに近づき思いっきり抱きしめた。
近づいた二人、ドクロが何かをノバリに話しているようだが。
ここからは何も聞こえなかった。

抱擁を終えドクロが私の方に来て、言った。


「オレはドクロ。
ノバリはオレのだから、ぜったいに近づくなよ」

何とも独占欲むきだしの自己紹介だった。


「話はついたみたいですね。
私は時間があるので、そろそろ家に帰りますね」

ドクロとノバリのやり取りを一つ距離を置いて見つめていたビスケットが言った。


「もうこんな時間か…じゃあ今日は帰るか」

ビスケットに賛同したIQが言った。


「ニッカはもちろん
ぼくのお家にくるんだよねー」


「「えっ」」

そうなの?!と私とドクロは同じ顔でノバリを見た。


「ダメに決まってんじゃん!
こいつは…オレの家……」

勢いで言ったものの、
あ、やっぱり嫌だったんだなっていうのが
丸分かりな語尾の弱さだった。


「ドクロのお家はダーメ。ワラしか無いんだもん」

ドクロの部屋は藁しか無いらしい。
それは家なのかな…と思ってたら。


「どーせ決まらねーんだから ニッカは俺の家に連れていく」

これは決定でーす!IQが口を挟んだ。

モメた時はIQが1番正しい事を2人とも分かってるので、


「まぁ、IQの家ならいっか(ノバリの家以外ならどこでもいい)」

ドクロが言った。


「えー。えー。
ぼくお家に悪いところなんてないのになんでー」

ノバリはブツクサ文句を言っていたが、
ドクロがよしよしと、頭を撫でて落ち着かせていた。


「んじゃあ。ここ片付けるからちょっと待ってな」


「はーい」

なぜか私の変わりにノバリが元気よく返事をした。


数分後。


「よし帰るか」

片付けの終わったIQが私達に声をかける。


「そういえば、ビスケットは?」


「あいつは時間が決まってるからな家に帰ってるよ」

時間が決まってるとは
どういう事なのだろう?


「んじゃ、ドクロまた明日な」


「またあしたねー」

ドクロだけは家の方向が違うらしい。
2人はサヨナラの挨拶をする。


「オイ、ニッカ」

ドクロに名前を呼ばれ見た先にはパンがあった。


「お腹減ったら食べればいい」

パンを渡され私が受け取ると、ドクロは家に帰っていった。


「ドクロやさしいでしょー」

ニヘニヘ笑うノバリは
とても嬉しそうだった。




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