IQ
「んで?その子、貰ってきちゃったの?」
フワァーとタバコの煙をはきながら黒い眼鏡をかけた奴が言った。
不思議なのは、その人からは犬のような耳と尻尾が生えている事だ。
ユラユラ風に揺れる触り心地の良さそうな尻尾を眺めていた。
私の手を繋いでるノバリは、
「うん」と頷いた。
すると黒縁のメガネは、
「あいつ本当、ノバリに甘い」
って文句を言った。
さっき出会ったノバリに手を引かれて、
連れてこられたのは綺麗で広い庭だった。
色々な野菜や花がたくさん植えてあって、
よく手入れされている。
スゴイなぁ。
こんな綺麗な庭を手入れしてる人は、
きっと穏やかで優しいんだろうなぁ。
なんて呑気にボンヤリ思っていた。
庭の柵が壊れていて、それを黒縁メガネの奴が直してた。
「んで?おまえ名前は?」
眼鏡の奴は私に話しかけてきた。
なぜか私は質問に答えずに隣りのノバリに助け舟を求めた。
「あーっとね、
この子名前なくて皆につけてもらおうと思って、
だから連れてきたの」
ノバリが代わりに説明してくれた。
「ふーん。お前、名前ねーんだ。
俺はIQ、大工仕事担当。
どーせ隣りの奴は名前名乗ってないんだろ?」
そういえば、このあったかい左手主の名前を彼の口からは紹介されていない。
出会いはどうであれ、これからの御主人だ。
「そいつは、ノバリ。
…そーいえばノバリ、ドクロは?」
ノバリはドクロの事を聞かれ、
記憶を辿るように目を動かし、
「あーっと一緒にいたんだけど、遠くで朗朗みつけて、
どっか行っちゃった」
IQはケラケラ笑って、またタバコの煙をはいた。
笑いを堪え息を整えて、
「この町は、えーっと、
6人しかいないからすぐ名前覚えるさ」
6人しかいない町。
「この庭の家主が来たら詳しく話してくれる
早く名前決まるといいな」
そう言ってIQはタバコの火を地面に押し付けて消した。
傍らに置いてたトンカチを手にし柵を直す作業を再開した。
トントンといい音が青空に響いていた。
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