窓を激しく叩きつける雨音で、目が覚めた。


AM2:38


カーテンを閉め忘れ、その隙間から見える雨。
それは暗闇の中でも、はっきり分かる。

降る雨は、また強くなって、何千何億の雨粒が、
屋根や、コンクリートや、草木や、ガラスに落ちる。

この音は、僕には耐え難い。

心臓が不安にかられ、胸騒ぎにも似ていて、
腹の底から沸き上がる恐怖。
瞼が閉じられない。
まばたきさえも恐ろしい。

ベッドに半身を起こしたまま、縛りつけられる感覚に体が動かない。

体が脳が覚えてる。
蘇る記憶は、僕を昔に還す。

雨の雑音で叫び声も、掻き消されてしまう、
僕はまた、この雨に殺されるのか?


鋭く眩しい稲妻の後に、雷の轟音が響いた。

もう―…だめだ。


「ディニー!!」

開いたドアから、サンディーの声が聞こえたと思ったら、

あたたかい両手に体に、
抱きしめられた。


少しして、やっと僕は安心と気をとり戻した。


「ディニー大丈夫…?雷が鳴ったから、急いで来たけど…」

サンディーが僕の肩を掴み、
少し体を離し、僕の顔色を確かめる。

「うん…大丈夫…」


僕は心許ない小さな声で答えるのが、
やっとだった。

「雨が嫌いって訳じゃない」

僕は、ぽつりぽつりとサンディーに話す。

「弱々しく降る針みたいな雨とか。
そだなぁ。言葉にするなら…シトシト?
うん、そんな感じ。
あとは降りはじめの柔らかい雨。
ぽつって顔に落ちて、
あ…雨だ。
って思って空を見上げるのも好き。
土とかコンクリートに落ちて、不思議な匂いがするのも好き。
でも、激しく降りつける雨が嫌い。
かみなりも大嫌い。」

うん。うん。
と相槌をついて聞いていたサンディーが、

「嫌いじゃなくて、怖い…じゃないの?」

そう僕に言った。

「怖い…?」

僕はきょとんとサンディーを見る。

「なんて言うかね…話聞いてたら、そんな感じがしたから…。
間違ってるかもしれないから、
深く考えないで」

とサンディーは苦笑いをこぼした。

「…うん」


僕は【嫌い】と【怖い】を勘違いしてる?

どうして?

…これって勘違いなのかな…。
あぁ。まだ分からない。
でも正体の一端を捕まえた気がする。


「ディニー…大丈夫?」

軽く体を揺さぶられて、はっとサンディーの顔を見た。

「あ…ごめん。考えてた」

「余計な事言って、ごめんね」

「ううん。余計じゃないよ。サンディーの言う事は、大切だと思うから…。
僕は大丈夫…でも

今日一緒に…寝てくれない……?」

「いいよ。私も心細かったから」


僕らは、二人では収まるには小さいベットの中
手を繋いで眠った。

雷鳴はまだ聞こえる。
雨も止みそうにない。

でも明日、
目覚めたら
空は快晴のような
気がした。

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