傷つく身体


楽しそうに笑う男の声は薄暗い地下室に響き、
あまりにも不気味で僕は怖くて負けてしまいそうだった。

それに加え上から押さえつけられている力のせいで、だんだん吸える空気が少なくなり、呼吸さえままならない。

ダメだ…意識が遠退きそう……。


ねぇ、サンディー。
僕は臆病で弱虫だから君を助けられないのかな?


男の声が悪魔の恐ろしい呪文のように耳に滑り込んでくる。


「私はね、姉様に似ているディニーを死んだ姉様と同じように愛している。
…それに比べ、
お前はあの屑にそっくりで見てるだけで
吐き気がする。
私がいくらディニーを愛していようと
二卵性とはいえ同じに成長してきた双子の君達との間には、到底私は入り込めない。
ディニーの心を占める君を悔しいが、
上回る事が出来ないと認めざるを得ない。
私も馬鹿じゃないからね、君を殺してもディニーの心には入れないのは分かってる。
だったらこうしようじゃないか」

そう高らかに声を上げた男は押さえていた僕の両手と背中の力を緩めた。
その気の抜けた瞬間に僕の体をぐるりと反転させた。

男の顔が僕の目の前になる。
仰向けにされた僕の唇に男の唇が重なった。

意識が無くなりかけていた一瞬の内で、
何が起こったのか頭の回転が全く追いつかない。

僕の目に映るのは暗闇だけ。
唇には生々しい違和感。

「止めて!離して!!ディニーから離れろぉぉ!」

サンディーの悲しい叫び声が僕の鼓膜に突き刺さった。
同時に意識がだんだんとはっきりしてきた。

僕は…僕は何されてるの?

「うぁぁぁぁぁっ!離せぇぇぇ!」

僕は渾身の力を込めて男をベッドの端に突き飛ばした。
違和感が恐怖に変わり身体中が拒絶し震えるのが分かる。

男の体重から解放され自由になった僕は、
ベッドから逃げようと小刻みに震え、よろつく足を叱咤し体を起こす。

やっとの思いでベッドから這い出し、
サンディーに近づく事が出来た。

「ディニー…大丈夫?!」

両手両足を縛られて自由に体も動かせないのにサンディーは、
僕の表情を確認しようと必死に僕に近づこうとする。

殴られて出血して酷く感じる痛みを隠しながらも、
笑顔で僕の心配をしてくれるサンディー。

僕は心が、ぎゅっと小さく握り潰されてしまうような、
どうにも出来ない悲しみで意識が朦朧とした。


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