闇欲


地獄のように
燃えさかる赤
黒く身体中そこかしこに
巻きつき絡みつく
欲望の日々

僕達の
大切に包み込むように
育てられた心は
狂気という名の
復讐劇によって
いとも簡単に
粉々に砕けて
跡形も無く
消え去ってしまった。



「ディニー!ディニーィィ!ディニーを離してっ!!」

バシッと乾いた嫌な音が石を積んで出来た薄暗く古い地下室に鈍く反響し、
大声を上げたサンディーは、
すぐ横にいた大柄な男に頬を、
女の子、そんな事を構う様子など無く容赦無い力で殴られ、その冷たい石の床に倒れ込んだ。

「サ、サンディー!やめろ!サンディーに触るなぁぁ!」

この地下室には到底不釣り合いな、真っ白なシーツのひかれた、キングサイズのベッドの上で、
僕は全裸のまま、うつぶせにさせられ、
その上から両手を捩りあげられ、背中に片膝を乗せられ押さえ付けられている。

端に置かれたベッドから入口付近にいるサンディーが見えるように、
そちらを向かされているが、
ベッドからそこまでは少し距離があった。

上から圧迫されている力には到底太刀打ちなど出来るはずも無く、
僕から息をする以外の全ての行動を奪う。

僕は嘆く事しか出来ないのか。
僕は泣く事しか出来ないのか。
僕は…僕は!

体を押さえつけている力の主の声が僕に降ってきた。


「ディニー。ごめんね、痛いよね。
でも泣かなくていいんだよ。
君が大人しくしていれば、サンディーは傷つけないよ。
約束する。
…ふふ、でもね、もちろん君次第だよ?
ねぇ、どうする?」

ゾッとする声色に鳥肌が立った。
…こいつは狂っている!!

「離せっ!離せーっ!僕からサンディーから離れろ!」

僕は叫んだと同時に体中の力を振り絞った、
無い力をも味方につけるように。
祈るように、
何かにすがるように。
だけど12歳の子供の力なんて、どう転んでも大人の男には勝てるはずもない。

僕はどうすればいいの?


「ディ…ディニー!お願い!ディニーを離して!私、何でもするから!!」

気を失っていたのか、
先程まで静かだったサンディーは起き上がると同時に懇願した。

唇の端が切れているようで血が口元を汚している。

だがその流れる血にも気づかずに、
両手を縄で縛られ、
両足を鎖に繋がれながらも自由のきかない体を、もろともせずに叫ぶ。

僕を押さえている男は低い声でサンディーに向かって怒鳴り散らした。


「お前はあいつにそっくりだ!
私の大事な姉様を奪って汚して、さらには子供まで産ませるなんて!!
見れば見る程、殺したくなるよ…
ふふ……そうだ。
今、何でもするって言ったね?
お前を殺させてくれるならディニーには手出しはしないよ。
いい話だろう?」

男は嫌な笑いを口元に讃えながらサンディーを睨む。

「……嘘だ!嘘だ!騙されない!
私を殺しても、お前はディニーを絶対に手離さない!
…だったら私がお前を殺してやる!!」

男のちらつく狂気の瞳は真実を映し出してはおらず、嘘が滲む口元を見てサンディーは殺してやると牙を剥いて激しく吠えた。

サンディーの態度と、その言葉に男は酷く激昂したようで、
僕の背中には更に重さが加わった。

「あぁ、良い事を考えたよ」

男は酷く楽しそうに笑った。


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