しばしのお別れ




最後の日は、案外早く来てしまって。

私とディニーは荷物をまとめた。
小さな鞄に収まる位の量だった。

そして今までお世話になった部屋の扉を閉めた。

「本当に…サクラから離れるんだね…」

ディニーがぽつりとこぼす。

「そうだね。でも大きくなったら、自分達で来れるよ」

「絶対来ようね。んでサクラに恩返しするんだ」

ディニーは決意の篭った瞳で私を見る。


「何かサクラが喜んでくれる事考えとかなきゃね。」

「料理とかはどう?」

「それいいと思うよ」

二人で話してたら、台所からサクラの呼ぶ声がした。
その声に反応し私達は走った。

「こらこら走るなぁ〜。よしサンドイッチ出来たから、これ列車の中で食べなさい。
困ったことがあ…」


「「困ったことがあったら、怖がらず大人に聞くこと」」

私達の声が揃う。

「分かってんじゃん。分かってても実践しなきゃ、意味ないんだからねー」

サクラは笑いながら私達にサンドイッチを渡してくれた。



駅に着いてからディニーが大泣きして大変だったけど、何とか二人で列車に乗って。
グライスおばあちゃんの待つ駅に向かう。

列車の音は、私達とサクラを引き離す音に聞こえて、
だんだん寂しさが募ってくる。

ディニーは泣き疲れて寝てしまった。


怒涛のように流れた日々は、
私達に様々な難題を投げかけ、
出るはずの無い答えに、
癒えるはずの無い傷を与え、
前に進めるのか
とても怖くて。


道なんてみえなくて
漆黒の森の中
明かりもなく
暗闇に目が馴れず
傷だらけになりながらも
温かい家を探す
迷子のように。


そして4年の月日が過ぎていった。


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