真相


2ヶ月が経ち、相変わらず仕事が忙しそうなサクラに、何も変わらないディニーと私。

オスカーは、
「そろそろ腰を上げないとなー」
なんて言った次の日に、あてのない旅に出てしまった。


ある夜、帰宅したサクラが、すごく真剣な顔をして私達を呼んだ。


「今から話すのは、大事な話だから、真剣に考えて聞いてね」

リビングのソファーに私とディニーは座り、ローテーブルを挟んでサクラは正座をしている。

今までにない緊張した雰囲気が漂い、私は少し不安でディニーをチラリと見る。


「な、何!?早く言って!!」

ディニーがこの場の空気に耐えられないといった感じでサクラを急かす。
「私が二人の周りの事情を調べてたのは話したね?」

頷く私達。

「んでね、二人には捜索願いが出てたの。失踪したという事になってるのよ。
その捜索願いは、あなたたちの、お父さんのお母さん。
つまりおばあちゃんが警察に届けてる」

「「グライスおばあちゃん!」」

私達は声を揃える。

「あなた達の両親が車の事故にあって、
お母さんの弟が屋敷にサンディーとディニーを誘拐監禁した。」

私達はサクラの話に頷く。

サクラの話は所々難しかったが、大まかな内容はこうだった。

母さんの実家、ランバード家はかなりのお金持ちで、
母さんはランバード家当主が亡くなる前、周囲の反対を押し切るかたちで父さんと結婚。
その時に遺産相続人の枠をはずされ、
莫大な財産全てを母さんの弟、あの男が譲り受けた。
あの男は精神的に異常を持っており、何かと問題を起こしていた為、
何かあった時の為の二人の後継人から外されていたらしい。
後継人はグライスおばあちゃんに決まっており、
両親の事故後すぐ私達が行方不明になった為、警察に届けを出していたとの事。


「私はね、あの屋敷は、ここからそう遠くは無いから、二人が育って行く上で心配なの。
それに、家族と一緒にいた方がグライスさんも安心できると思うの。
だから、ここを離れて、グライスさんの家に行きなさい」

頭が真っ白になった。
いつまでもここにはいられないことは、頭と心の片隅で思ってはいた。
それが今きただけの事。
それを頭の中で繰り返しくりかえし。
納得させた。


「私は、グライスおばあちゃんの家に行くよ」

私は決意を言葉にする。
問題はディニーだった。

「僕…僕はサクラといたい。
でもサンディーと離れるのは、絶対に嫌だ……」

ディニーはボロボロ泣いている。
もう涙を拭うことも忘れているみたい。
ディニーは心の中の天秤で無理矢理に私とサクラを量ったのだと思う。


「うん。それでいいんだよ、ディニー
正しい選択だ。
ディニーはとってもいい子だよ」

サクラはディニーの頭を優しく撫でた。
「サクラ〜!!」と泣きながら抱きつくディニィーを、
ディニーをしっかりと受け止める。

「サクラ。私ね、いつも感謝してたの。
この幸せな日々に。
でもどっかで、この幸せも終わるって分かってた。覚悟してたから…私は大丈夫」

私はちゃんと笑っていれてるだろうか?
悲しい顔なんて作っちゃだめだ。

感情

私を呼ぶ優しい声に思わずサクラのもとへかけよった。

サクラは私達をこれでもかって位に抱きしめた。

グレイスおばあちゃんは小さいころに数回しか会っていなかったが、
私達にとても優しく温厚で頼りになり、
信頼している存在である事は、
少ない記憶の中でも思い出すことができる。



そして次の日。
いつも通りに遅刻ギリギリの時間に目を覚ました私は、サンディーの作った朝食もそこそこに仕事場へと足を走らせた。

私は警察に連絡を入れ、グライスさんに電話をかけた、
二人を引き取る日にちを決める為に。


もうすぐ季節は冬が終わり春に変わる。
それでも変わらないこの気持ちは、
私の中に残り続けるだろう。
もうすぐいなくなってしまう
二つの温もりを
忘れずにいたいと
心の底から感じていた。



ゴホッ
ゴホッ
風邪だろうか?
最近、とても嫌な咳が、
出るようになっていた。

その時はなにも気にもとめなかった。


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