どうにもならない気持ち



サーカスが終わった後、
私とオスカーは約束通り旗の側に膝を抱えてうずくまっているディニーを見つけた。

「大丈夫?気分悪いの?」

ディニーに問い掛けるとか細い声が返ってきた。

「…お家帰りたい」

オスカーもしゃがみ込んで声を聞く。

「よし。背中貸してやるから乗りな。」

オスカーからバスケットを持ってと渡され、
そしてディニーはオスカーにおんぶされて家に帰った。

そしてそれからディニーは寝室から出てこなくなった。
私とオスカーは台所でココアを飲んでいる。

「ディニーね時々、あぁなっちゃうの。 多分嫌な事を思い出すんだと思う。
それがディニーを覆い尽くしちゃうんじゃないかな…」

「…フラッシュバックか」

聞き慣れない単語に違和感を覚える。

「サンディーはディニーみたいなことは無いの?」

びっくりしたんだ。
だってオスカーが聞いてきたから。

「サクラから聞いたの?…全部?全部知ってるの?」

「うん。結構詳しく。でもそれを知ってても、知らなくても、俺は君達と友達に力になりたいと思ったはずだよ」

「……ねぇ。私達って可哀想なのかな?」

私はずっと気になってた事を口に出した。怖くてサクラにも聞けなかった言葉を。

「可哀想を決めるのは、他人じゃない。
自分だよ。
可哀想だけじゃない。
人と分かち合えるモノもあるだろうけど、
すべては自分が決めるんだ。
今サンディーがそう思うのなら、サンディーは可哀想だろう。
だけどそれをなくせるのもサンディーだけだよ。
でも…
俺は二人を可哀想だとは思いたくない。
サクラもいる、俺もいる。他にもきっと協力してくれる人達はいるはずだよ。」

オスカーは真剣な眼差しで私を見ながら話してくれた。

「なっ。ディニー?」

ディニー?!ビックリして台所の入口を見た。

「…そんなの全然わかんない」

赤い両目のディニーがふて顔でこっちを見ていた。

「さっ。お腹すいたから弁当食べよう。外の公園行こうか?」

オスカーの提案に私達二人は賛成し、三人手を繋いで公園へ向かった。
ディニーはふて腐れてたままだけど、大人しく手を繋いでた。

オスカーと過ごした一日は、とても楽しくて信頼できる大人がまた一人増えた気がした。


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