ロニと僕



僕は何だか、あの空き地に堂々と、
でも儚げに建つサーカスのテントに入るのが、

とても怖かった。

小さい頃読んだ絵本のせいかな?それも思い出せないから、急いで二人に気付かれないように逃げた。

サンディーはとてもサーカスを見たがってたから、
オスカーと一緒に見て来てくれればいい思った。

僕は風船があれば充分だ。
ふわふわ揺れる白と赤のマーブル模様の風船を眺めてた。

[トントン]

肩を優しく叩かれて振り返ると。
ピエロがいた。
少しびっくりして後退りしてしまう。
ピエロは怖がらなくていいよ。
とでも言うように、両手を振った。

僕はまたピエロに近づく。

ピエロは僕の風船を指差した。

「これ?これはさっき道でね。君の友達のピエロから貰ったの」

ピエロはポンと手を叩き、僕を指差す。
するとピエロはサーカスは見ないの?と問い掛けるそぶりを示す。

「僕ね、何だかあのテントが怖いんだ。だから入らない」

僕は首を左右に振る。
ピエロは少し寂しいそうな表情をして、手の平からポンと青い色のバラの花を出した。

「ね、ね、いまのどうやったの?!」

僕はピエロにしがみつく。

するとその時。

『おーい!ロニ!もうすぐ出番だぞー!』

ピエロはパッと声の方に反応し、また僕を見て僕の頭を軽く撫で、さっき手から出したバラをくれた。
そしてテントを指差し、もう行かなきゃのサイン。

「ありがと……僕、ロニを見にテントに入ってみる。きっと君がいれば怖くないと思う」

僕が言い終わる頃には、もうそこにロニはいなかった。

僕はチケットを握りしめテントへ入った。サンディーとオスカーには会えなかったけど、
一人でロニが出てくるステージを見てた。

拍手喝采の中出てきたピエロは、
誰よりも輝いて見えた。


ふと気づくと
涙が出てた
まただ
また
世界が滲んで
何も見えなくなってしまった

僕は
怖くて
怖くて

サーカスのテントから

逃げ出した。


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