覚めた悪夢



お風呂から上がり、脱衣所に用意されていた少し大きな服に袖を通し、キッチンへ向かう。

するとキッチンで、あの女の人の笑顔と目が合った。

「…あの。お風呂と服…ありがとうごさいました…」

また自分でもびっくりする位小さい声。

「ごめんね。ちょうどいいサイズの服がなくって。
さっさ、こっち座って」

促された食卓には、美味しいそうなパンケーキにバターの香り。
こんないい匂いの食事はいつぶりだろう。

「あ…あの、ディニーは??」

そういえばいない、と心配になった私は、彼女に問い掛ける。

「よっぽど疲れてたんだろうね。さっきまた見に行ったけど、ぐっすり寝てたわ。
私が起こすより、サンディーが行った方が安心すると思うから、ココアが冷めない内に起こして来てくれる?」

ニッコリ笑顔でそう言われ、ほっと嬉しくなったのが自分でも良く分かった。

はい。
と小さく頷いて、さっきまで私が寝ていた、彼女の寝室へ足を早めた。

「ディニー…ディニー起きて。朝だよ」

できるだけ優しくディニーの肩を揺する。

「うぅ〜」

ディニーが唸り声を上げる。
そういえば寝起き良くなかったなぁ。なんて思いながら、またディニーの肩を揺すった。

「うぁぁぁぁぁ!」

ディニーが叫び声をあげて飛び起きた。
その顔は引き攣り血の気がひいて、瞳孔も開いている。

「ディニー、もう大丈夫だよ。私達…助かったの。
私もまだ信じられないけど…。女の人が朝食作ってくれてる」

ベッドぎりぎりまで後ずさって怯えているディニーの顔に明るさが戻った。

「女の人…サクラって言うんだよ」

少し得意げにディニーは言い、私に近づいた。

そして

私達はまだ夢みたいで、実感の湧かない幸せを確かめるように
二人で抱き合った。
あぁ…夢じゃないんだって思った。

遠くで、まだ起きないのー!冷めちゃうよー!と声が聞こえて、
私達は寝室を後にした。


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