希望の光


chapter9:月の秘密

走る途中で公園の電灯に気を止めた時、公園に設置されてる時計が見えた。

夜10時30分。

フレイムに会ってから、そんなに時間経って無いんだな…って思ってたら。

私の体力と気力の糸がプツリと音を立て切れた。

その瞬間。

ディニーもろとも道端に倒れてしまった。そして私の意識もそこで無くなった。


あーもぅ!まさかこんなに残業するとは思わなかったなー!! こんな暗い中、夜道のましてや女性の一人歩きは危険極まりないのになぁ。
私は一人きりの残業を終えて、ビルの出口に来た所で、倒れている二人の子供を見つけた。

「…え。…えー!ちょっ!ちょっと!大丈夫?!」

急いで二人に駆け寄る。
どこか怪我をしてないか確認しようと、手前にいた長い金髪の子に触ろうとした時だった。

「さっ…触るな!!」

怯えた瞳は、酷く動揺していた。
私は小さい子供をあやす時のように、出来るだけ優しく、優しくその子に話しかけた。

「大丈夫だよ。私は君達に何もしないから。ただ怪我してたら大変でしょ?君は怪我してない?」

「僕は大丈夫…。」と、やっと聞きとれる位の小さな声が聞こえた。その子も決して大丈夫とは言えない状況なのは、うっすらと分かった。

「君は怪我してないね。隣の子は?ちょっと触るからね?
でも傷付けたりしないからね?大丈夫だよ」

男の子は噛み付いてきそうな様子で私を見ていたが、もうそんなのは気にしていられない。

私は茶色い短い髪の子を見て、息を飲んだ。
体中が痣だらけだった。よくみると顔にも傷があるようだ。

「病院に連れていこう。君も一緒に。」

その言葉を聞いた男の子は、嫌だ!駄目!と激しく抵抗し、倒れている子を引っ張って、必死に私から離れようとし始めた。
何か病院に行けない理由があるのか…。
多分、家から逃げてきたのだろう。
仕事柄、このように家から逃げる子供達を何度か目にしている私は、その子達を自分の自宅に連れて帰り一時保護する事に決めた。

意識のないままの倒れている子を背中におぶり、嫌がる男の子の手を無理矢理繋いで、男の子に話しかけながらそう長くない自宅までの道のりを歩く。

「見て見て。今日は月が大きくて綺麗だね。」

男の子は下を向いて、ぐずぐす泣きじゃくっている。

「そんなに泣かなくていいんだよ。ほら、顔あげて。お月様見てごらん?」

男の子は渋々涙でいっぱいの顔を上げさっきまで隠れていたが、一瞬光りを見せた月を見た。

「う…ぅ。ぎれいだねぇ。。うーっ」

この小さな手で、彼はどんな辛いことに耐えて来たのだろうか。

そう思うと握る手にぎゅうっと力が篭った。

さて家に帰ったら何かご飯を作らなければな、
何がいいだろうかと月が隠れ、真っ暗になった道を歩きながら考えていた。


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