放課後の屋上。

入口扉が建てつけてある壁の裏側には高さ1.5メートル位の段差があり、
その上は一畳ほどのスペースがある。
なんの為にあるのか上る時にいつも疑問に思う。

そこに体を小さくし寝転がる。

ガチャリ。

あ、誰かきた。

なぜが息を潜めてしまう。

「ダメだって…ここでしたくないよぉ」

性春ってやつか。
セックスしたことないから分からないけど、
イヤイヤの一回否定は男を煽るもんなのかなぁ。
女子の声ってなんでこんな時だけ甘いんだろ…
教室で聞く声からは想像できない。

「やだって…誰か来たらどうするのぉ」

すでに誰かいるって思わないのだろうか?
ここ、屋上ですよ。
って声をかけられるほどの度胸もないから、
空気みたいに透明になろう。
そうだ、そうしよう。

「あっ…あぁ」

限りなく広がる天気のよい秋の空をみつめる。
誰かが言ってた言葉を思い出す。

“死にたがりの羊は青い空をながめながら、
今日も一日を過ごしてゆく”

死にたくなるほどの悩みってどんなんだろう。
朝同じ時間に起こされて、
柵のなかに放されて、
夕方同じ時間に寝かされる。
繰り返しくりかえしクリカエシ。
どこにも行けずに
繰り返しくりかえしクリカエシ。

あ、死にたくなるかも。

ガチャリ。

また、誰かきた。

「おー盛ってんなぁ〜。俺も交ぜろよ」

「きゃっ!!」

第三者の登場にセックスカップルは慌てて屋上を後にした。
…音だけ聞こえた。

「ひつじー!帰るぞー」

ひつじと呼ぶ声はだんだん近づいてきた。
思考がまだ死にたがりの羊のことでいっぱいで、
体を起こすのが億劫。
もう少しこのままでいさせてよ。

「またくだんねーこと考えてんだろ」

癖っ毛でホワホワした髪を撫でられた。
が、すぐにグシャグシャとかき回される。

「くだらないことしかないですからね」

呟いた言葉。
現実だと信じたくないのが本心。

「だからお前は羊なんだよ」

豪快に笑われ気持ちよく一掃された。

「だからひつじって呼ぶのやめてくれません?
明慧ですから。
便乗した人がひつじって呼んでくるんですよ」

「“めえ”だからメー。ひつじじゃねーか」

このやりとりも初めてじゃないのに、
いつも楽しいってのは口が裂けても言わない。

「さて、羊飼いの俺様が責任もってひつじを家まで送り届けるかな」

「飼われた覚えなんてないんですけど」

「何をいまさら」



死にたがりの羊は、
最期はどうなってしまったのだろうか…。

羊飼いに手を引かれる帰り道、
ぼんやりと茜色の空を見上げて思った。

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