俺の腹に突っ込まれた斧は誰にもバレることなく、
無事電車に乗れた。
電車を見たことも乗ったこともないポルカは車内を見ては興奮し、
流れる景色をみながらまた興奮していた。
キラキラした瞳を見ていると俺もどこか嬉しくなった。

きっと俺の周りにいる奴らが皆、濁った目をしてるからだろうと思う。
まぁ、俺も大概濁ってるけどな。

そうしてすぐに電車は停まり、
俺たちは隣町の七蛍町で降りた。
そこから15分ほど歩いて錆矢堂神社に到着した。


「立派な神社ね」

千笑利が意外な表情で神社を見ている。

階段を登り月琴達のいる小さな祠を目指す。
すると前から肩位まである天然パーマの黒髪をフワフワ揺らしながらマロタがやって来た。


「蘭曇おかえり〜。
面白いものがあるから月琴の所に行ってみて」


それだけ言うとマロタは急いで神社を出て行った。


「面白いモノって何かしら?」


「ボクも早くみたい!!!」

千笑利とポルカが興味深々に早く行ってみようとせかす。


「そこ真っ直ぐ行ってデカイ楠木を左に曲がった所だ」

場所を教えてやると二人は元気に走って行ってしまった。
そして残されたのは後ろからゆっくりついて来ていたトーバと俺。


「お前は走らなくていーのか?若者よ」


「んだよそれ、爺くせーな。
俺は俺のペースでいいんだよ」

「ペースねぇ。
一歩下がって物事見てるよりな。
一歩前を行ってるくらいが丁度いいんだぞ。
俺はいつも行き過ぎて振り返ってばっかりだからな」

たまには誰かの背中をみていたい。
そう思う時期もあったが、それじゃこの世界では生きていけねぇ。
だが、人は違う。
寿命が短い分、
前に進んで行かなくちゃいけない。
トーバは何か言いたそうな顔をした後、
言葉を飲み込んだみたいだった。

言えばいいのに、
伝えれば変わることだってあるはず。

だがそう告げようとした時、
人に深く関わるのをためらう俺は言葉を飲んだ。

さっきまで言おうとしていた偉そうな気持ちに、
なるほど。
トーバも何かを抱えているんだろうなと察することが出来た。


「ま、人それぞれか。
お前口は悪いが真面目だな」


「さっきからうるせーんだよ。
お前に俺のことなんて関係ねぇだろうがよ!」


確かに。


「まぁ、それでも人は関係を持ちたがるもんだろ?
だから今、俺とお前は話してるんだしな」

埒があかねぇよ。
俺に吐き捨てトーバは千笑利たちの後を追うように走って行った。


俺のそばには誰もいなくなった。
冬の風は冷たく吹きつけ髪を揺らす。
ポッカリと空虚感が心を掠める。
だから嫌なんだ。
人間と関わるのは。


「だいぶん嫌われたみたいだねー。
ウケる〜」

声がした方、木の上を見ると朝から姿を見せていなかった煉濁の姿があった。


「うっせーよ」

俺はそう言ってトーバ達の後を追った。


「さっきの子供と同じようなもんじゃない。
蘭曇も人間と変わらない」

煉濁はそう呟くと冬の空に消えた。





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