「ボク自分で歩けるから」

落ちてきた奴を抱えたまま少し走り、
雑音が減り静かな場所にさしかかった所で、
腕の中の子供がそう言った。


「お前、名前は?」

俺は子供を下ろしながら名を問うた。


「ボク、ポルカ」

俺の顔を真っ直ぐに見ながら名を言うこの子の瞳は…
赤色だった。
カラコンなのか…にしては不自然さは感じられない。

この冬の寒さの中、
上半身裸のポルカの背中には黒いコウモリのような羽根と、
頭の左右に黒く尖った角のようなものが生えている。


「さ…寒い。ここどこ? 」

千笑利から貸してもらったコートの前をきゅっと閉めポルカは寒さで震えている。


「ここどこって…岩儀町」

千笑利はポルカにコートのフードをかぶせてやっている。


「い…いわぎまち??」

全く理解出来ないといった表情のポルカに、
金髪は言った。


「ほら、斧返すぞ。
俺の名前は蘭曇だ。宜しくな」

蘭曇と名乗る男はポルカを見ていても特に驚いた様子はない。
これからどうすればいいんだよ。


「トーバ、顔が怖いわよ。
にしても空から落ちてくるなんて…」


「ボク、ニッカと不思議の森に行って遊んでたら穴に落ちて、
気づいたらここに…」

斧を握りしめながら小さな声で事情を説明するが、
何を言っているか理解不能。

不思議の森ってどこだよ。


「ポルカはこの世界の住人じゃないってことよね。
羽根が生えて斧を持ってる子供なんてまずあり得ないもの」


「じゃーよ、お前帰り方もわかんねーわけだ」

二人は俺を置いて何となくポルカの状況をさらりと受け入れてる。
お前らどんだけ器用なんだよ!


「ボクもうみんなに会えないの?!やだよー!ニッカー!ショコラー!ノバリー!この際、
朗朗でもいいから迎えに来てよぉぉ!」

ポルカの発する言葉すべてが俺にはまだよく分からない。


「俺の世話になってる神社の住人は長く生きてるから知恵だけは持ってるかもしれねー、行ってみるか?」

蘭曇の提案に一同賛成…するしかない俺。
隣町にあるという神社を目指し電車で移動することになった。


「あなたお名前なに?」

俺と千笑利を見てポルカが聞いてくる。


「私は千笑利、こっちは」


「トーバだ」

ひょんな不思議な出会いをした4人は駅に向かう。
そして駅に着くと千笑利はポルカを呼んだ。


「ポルカ、電車に斧は乗せられないのよ…どうしようか」

危険物は持ち込み禁止のルールに困る千笑利とポルカ。


「背の高い蘭曇のジャージの下に入れとけばバレやしねーよ」


「馬鹿!俺の肌が冷えるだろうが!却下却下!」


「デカイ体して女みてーなこと言ってんじゃねーよ!
ホラ早く入れろ!」

無理矢理ジッパーを開き斧を入れさせる俺。


「やめろって!男に脱がされる趣味はねーから!」


「何言ってんだよ!気持ちの悪い!」


「アンタたち!うるさいわよ!ホモってないで早くこっち来るの!」

…………は?俺が、ホモ?
クソ女っ!


「俺、突っ込む方ならヤレるぞ」

俺の肩に手を置いた蘭曇をぶん殴る。
だが蘭曇は倒れ込みもせず、
イタタタタと全然痛くなさそうに右の頬をさすりながら、


「冗談だよ、馬鹿」

そう無駄に男前な顔で笑った。

すげぇ、腹立つから強引にポルカの斧をジャージのズボンに突っ込んで、
俺は千笑利たちの元へと向かった。

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