ニッカが町に来る前の、ある昼前の話。


ボク、
ポルカとショコラは悪戯好きである。
ターゲットは様々いるのだけれども。


ノバリは悪戯を仕掛けても、
「びっくりしたぁ〜」とか全然びっくりしてない感じで笑ってるし、
トラップを素通りしたり、引っかかっても気づかない時もあったりと、
やりがいや、達成感がゼロ。

ドクロはやり返しが恐ろしいので、やらない。
触らぬ神に祟りナシ。
神様なんて信じちゃいないけど。

ビスケットにはしない。
なんだか冗談で済まなくなりそうだから。

となると、残りはIQ。
なのでボクらは事あるごとに悪戯を仕掛けている。

でも、IQもなかなか賢くて成功した試しがない。
そして今、ボクはショコラと企てた作戦を実行しようとしていた。


「これ!絶対うまくいくよ!IQのビックリした顔が見れるね!」

ボクとショコラはIQの家の横にある茂みに身を隠してヒソヒソ話をしていた。


「あぁ、これはいけるぞ。うまくやれよ、ポルカ」

ショコラがボクの左肩を優しく叩いた。

俄然気合いの入ったボクは、ショコラに「いってくる!」と小声で言って、その場を離れた。

茂みから抜けだしIQの家の玄関の扉をノックした。


『トントントン』


家の中でコーヒーを飲んでいたIQは、飲みかけた右手を音と共に止めた。


「このノックの感じは…ポルカか。
今日は何だよ…」

ため息交じりの呟きはとても小さく、心の声の様に身体に染みた。


『トントン!!』


出てこないことに焦ったのか、音が最初より大きくなった。


「はいはい、今出るから」

外のポルカに聞こえる様に声を張った。
もたもたしてたら、扉を壊されちまう。
焦ったのは俺の方か。
コーヒーカップをテーブルに置き、灰皿に置いていた吸いかけの煙草の火を消して、
椅子から立ち上がり小走りで扉へ向かった。


『ガチャリ』


思った通り開けた扉の前にいたのはピンク色の髪が太陽の光に透けて、キラキラと綺麗に光るポルカだった。


「なに?」

とくに変わらず、いつものように声をかけた。
ポルカは下を向いていて、いつもの元気なポルカと違うなんだかモジモジしてるというか…そんな言葉がピッタリ。


「おい、どっか悪ぃ…」


「あのね!ボクね!IQのことが…」

心配して話掛けた俺の言葉は、ポルカによって見事にかき消された。

次の言葉を待っていたが、下を向いたまま顔を上げる様子もないポルカに一抹の不安が…
気分が悪くて、
いきなりここで吐き出すんじゃないかと心配した俺は、
ポルカの顔をのぞき込もうと身体を右に傾けようとした所で、
勢いよく頭を上げてきたポルカの一撃をかわすことが…出来なかった。

ゴツと鈍い音がJEMMY中に響いた気がした。
いや、あくまで俺推測。

世界が廻るとはこの事か??
なんて痛い顎を涙目で押さえつつ、ポルカをみた。

今度は俺が心配そうな顔でのぞき込まれてた。

一体何だってんだよ。
俺なんか悪いことした…?


「あー……大丈夫。治った治った」

まだきっと涙目のままだろう俺は、少し強がって見栄を張った。


「んで、ポルカ何しに来たの??」

その言葉を言った途端、顔を真っ赤にしたポルカ。

熱でもあるんじゃないかと、俺は自分の痛む顎をさすりながら、また心配になった時、
ポルカがはっきりとした発音で言った。


「ボクね!IQのことあいしてるの!」

俺は顎をさすっていた手を止めた。
悪戯しに来たことは初めから分かっていたが…
ついにここまできたか。
と違う意味でポルカが心配というか可哀想になった。


「ポルカ……実はな俺もだ」

ちゅっ。

一瞬触れた唇を離し見たポルカは、これでもかと顔を真っ赤にした。

するとだんだん両目に涙が溜まっていき、こぼれそうになった瞬間に回れ右をし、そのまま走り去っていった。

ちょっとやりすぎたかな?と心を一瞬痛めたが、これで悪戯をやめてくれれば安いものだと、
俺はさっきあったことを、
もう過去のものとし玄関の扉をしめ冷えたコーヒーを流しに捨てて、
途中だった作業を再開するためにアトリエに戻った。
きっとポルカは気づかないんだろうな。
自分がショコラに悪戯されてることに。

本当、面白いやつ。


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