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【本誌バレ注意:131話ネタ】(珠世一行主)侵入者


 珠世から言いつけられた通り資料の整理を行っていると、ナマエがふと顔を上げて、耳に手を添えた。愈史郎も思わず紙を持つ手を強張らせた。
 愈史郎が視覚に関与する血鬼術をもつのに対して、ナマエの術は聴覚に関するものだ。あらかじめ拠点の周囲に”耳”を置いており、葉が擦れ合う音でさえ拾えるという彼女は、愈史郎よりも来訪者(あるいは侵入者)を感知する能力は高いのだ。
 一瞬の沈黙の後、ナマエは愈史郎と顔を合わせるとおずおずと口を開いた。

「叔父様、羽音が聞こえました。珠世様のお部屋に向かっています」
「羽音?梟ではないな」
「はい。雀や鳩よりも大きくて重たそうで……鴉、でしょうか」ナマエは不思議そうに首を傾げた。「鴉ってこんな真夜中に、飛んでいるものなのですか?」
「まあ、いるんじゃないか?それよりも作業を、」

 愈史郎は不自然に言葉を切った。話をしつつも一応確認したところ、ナマエの言う通り鴉の姿が確認できた。ただの鳥であれば良かったが、珠世のもとに向かうそれはただの鴉ではない。両肩に飾り房のついた緒をかけた、明らかに誰かからの仕込みを受けていそうな鴉だった。

「お前は此処に居ろ!」

 突然の怒声と資料の紙の嵐に肩を竦ませるナマエを放って、愈史郎は慌てて部屋を出た。あんな奇妙な鳥、鬼殺隊の鎹鴉以外居ないだろう。嫌な予感に走る足がもつれそうになる。

「ーーなんでついてきてるんだ」

 居ろ、と言っておいたのについてくる控えめな足音に、愈史郎は苛立ちを隠さない声でたずねた。ナマエはいつもの調子でーきっと、あの細眉をきりりとたててー言った。

「だって、ただごとじゃありません!あの鴉、鬼殺隊の鎹鴉ですよ!」

 すでに鴉と珠世が何かの会話を交わしているのだろう、ナマエが負けじと怒鳴るように返した。嫌な予感が当たってしまって、頭痛がしてきた。珠世様の元に早く行かなければ。

「私も行きます。珠世様と叔父様に何かあれば、嫌ですもの」

 血鬼術を攻撃に転じる方法をあみ出せていないくせに、ナマエはそう宣った。説得する時間すらも惜しい愈史郎は、「好きにしろ」という言葉を投げた。全力で駆けていた足が一層早まった気がした。きっと、珠世様がかなしそうにするだろうから、この娘に庇わせるような事態は避けたかったのだ。




推し(鱗滝門下勢)と推し(珠世様一行)と推し(蟲柱師弟)の出番が一斉にきててんやわんや!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!








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