(kmt)甘露寺と継子 目を開けて、大声を出さなかった自分を褒めてやりたかった。なんせ蜜璃のご尊顔が目と鼻の先だったのだから。 「起きたのね!」 「良かったわ」と蜜璃が頬を緩める。 互いに隊服でなく浴衣を身を包んでいたことに違和感を持ったが、石鹸のさっぱりとした匂いが鼻をくすぐり、@は思い出した。ここが藤の家紋の家であり、そして@は風呂で寝てしまったのだ。 「師範、お手数をおかけしました」 「いいのいいの。最近任務ばかりで疲れちゃうものね」 蜜璃は@を膝に寝かせたまま、額から髪の流れにそって頭を撫でていく。 夢現だった意識はすでに覚醒しているのだが、起き上がる気は無かった。その心地よさに身を任せながら、視界の端を流れる桜色の髪に@は目を細めた。 「なんか藤棚ならぬ桜棚ってやつですねぇ、これ……」@は蜜璃の髪を撫でると、その若草の瞳を見つめた。「うん。師範の髪は綺麗ですね。眼福眼福」 「へっ!? そ、そうかなぁ」 「そうですよぉ。師範の綺麗な顔ばせによく合ってます」 「うひゃあ!?」 予想以上の大きな反応に@は目を丸くさせたが、当の蜜璃はそれ以上の動揺で気づけていない。 彼女は落ち着かない様子で両手をわたわたと動かすと、その真っ赤なほおを包んだ。それから@がようやく聞き取れるかどうかの大きさでありがとぉと噛みしめるように発した。 両手では隠しきれないほどに真っ赤になった顔に、これも眼福だなぁ、と@はまた目を細めた。 |