ルークは幼馴染みに花を贈る






「あなたの目から見る世界がうらやましいわ」
笑う少女の言葉に、ルークは光栄だねと笑って返す。
秘められた意味を、気付かなかったフリをして。
やわらかな風が部屋のカーテンを揺らして、その無機質な白さをいっそう際立てる。ベッドサイドの花がそろそろ枯れそうだ、と思って、次に来るときにはまた何か花束を持ってこようかと考える。
彼女に似合うのは、白では決して、ない。
「キミはどんな花を好んでいるのかな」
「花?そうねえ」
手元のアルバムをなぞりながら少女はいくつかの花を思い浮かべる。どれもこれも、彼が与えてくれたものばかりで、自分の世界を彩る中心にいるのも彼だ。
「……あなたがくれるものなら、どんな花も好きよ」
偽りなく、本音だった。幼い頃から手渡されてきたいくつもを振り返っても。たとえそれが道端で摘まれ、握りしめられ、しなびてしまったものであっても。少女はルークがくれる花が好きだ。
つい、シロツメクサの思い出も浮かんで少女がクスクス笑えば、ルークもそれを察して恥ずかしげに、少しだけ眉を下げる。
「キミはあの時も、そうして笑っていたね」
「だって、本当に嬉しかったんですもの」
弧を描く口元にそえられる手の白さにルークは、もうあの花は手渡せなどしない、と思う。儚さをよりいっそう引き立てる、白に怯えているのは自分だと知りながら。
「今度は薔薇を持ってこよう」
「嬉しいわ」
少女の頬が淡く染まる。その色に似た薔薇を探そう、とルークはひそりと考えて微笑む。その薔薇を抱いて笑う彼女を、写真に収めたいと考えていた。
けれどそれを、思い出にはしたくないと願っていた。
もしもそれが思い出になったとき、胸を射抜くだろう痛みにも怯えて。



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