「よし」



ネクタイをしめてから少し緩め、首もとで左右に動かし角度を調整する。
鏡の前で髪を撫で、にやりと笑ってみせた。
今日もキマってるな、自分でも見惚れちゃうね!
そう自身に言ってポケットに手を突っ込んで部屋を出た。



「おはようケイティ」

「あ、おはよう」

「ところで」

「ナマエ?もういい加減に彼女に付きまとうのはやめたらどうなの?」

「付きまとうだなんて、人聞き悪いこと言わないでくれよ。普通じゃないか」

「よく言うわ」

「それで、彼女はどこに?」

「さっき階段で会ったけど…あんまり」

「そうかありがとう」



その後ケイティが何かを言っていた気もするが、ナマエの居場所を聞いたのだ、探しに行かない理由はない。
髪型が崩れないように注意しながら足を進めれば、ちょうど友達との会話が終わり何処かへ向かおうとするナマエを見つけた。
その背中を早足に追う。



「やあナマエ、今日もいい朝だね」

「コーマック。おはよう」

「君、今日の午後は予定がある?」

「なんで?」

「僕の部屋に来ないかい?」

「うーん…」

「いいじゃないか、君の好きなお菓子を用意するよ。それにうぶっ!!」



急に目の前に天井が見えて、そして腰に激痛が走った。
自分の周りにいくつもの小さなボールが転がっていて、耳元でコロコロと音をたてる。
気づけば僕は床に転がっていた。
上からナマエが僕を見下ろしている。



「コーマック!大丈夫?」

「あ、ああ」



恥ずかしさでどうにかなりそうだった。
しかし、ナマエが僕を起こそうと手を差し伸べてくれた。
その手を握ろうと、右手を伸ばした、そして彼女の手を、



「やあ、一緒に朝食なんてどうだい」



掴めなかった。
ウィーズリーの双子のどちらかはわからないが、そいつがナマエの腰のあたりに手を回してそのまま彼女を引き連れて行ってしまった。
唖然として二人の背中を見ていると、床に散らばった玉がウィーズリーのポケットの中に吸い込まれていくのが見えた。
そして、すべてが彼の悪戯だと気づくのは容易だった。



「くっそ…!」



追おうと立ち上がるとまた彼のポケットから大量の玉が出てきて足元に散らばる。
ナマエが気がかりそうに何度か振り向いたが、戻ってくることはなく、僕はもう2回もひっくり返った。















「あの…」



ミョウジが眉を下げながら言う。
おっと、少し驚かせてしまったかな。
僕は彼女の腰から手を離しながら歩き続けた。
それでも彼女は後からついてくる。



「フレッドさん…ですか?」

「お、君は僕らを見分けられるんだね」

「いやそういうわけじゃなくて…ジョージさんはこんなことしないです」



なるほど、彼女はジョージに嫌われてると、本気でそう思ってるようだな。
まあそれはそうだ、顔を見るなり避けるなんて、嫌われていると思って当然だ。
あいつも馬鹿だなあと思いながら声をたてて笑った。



「そんなことないさ!ジョージだってこれくらいのことはする」

「そういう意味じゃなくて、彼は私をよく思ってないから…」

「そうだ、君はクィディッチは好きかい?」

「え、まあ、ケイティが出てるからよく見に行きはしますけど…」

「じゃあ次の試合も見に来るといい」



曖昧に頷く彼女に僕は口角をあげた。
相棒のために僕が一肌脱ごう。
なんてったって僕らは双子だからな!

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