朝は本当に騒がしい。生徒はあっちに行ったりこっちに行ったり、あっちでお喋りこっちでお喋り。何か面白い噂が回っていないかと彼らの会話に耳を欹てたりもする。先ほどまで一緒にいた相棒のフレッドはリーとどこかへ行ってしまい、僕はとても残念なことに間抜けな弟であるロニー坊やと二人きりだ。いやあ、朝っぱらから二人なんて泣けてくるね。



「ハリーやグレンジャーはどこにいるんだい。それにジニーも」

「知らない…」



ロンは言い終わらないうちに大きな欠伸をした。まあ知っていたなら呼ぶか待つかするだろうな。



ふと視界に映り込んだ人影に僕の体が跳ねた。ナマエ・ミョウジだ。いつものように彼女を避けて行こうとしたのだが、彼女の隣にいたケイティの言葉で僕はその場に留まってしまうのだった。



「コーマックと付き合うとか、そういう気はないの?」



コーマック・マクラーゲンと付き合う気があるか。付き合うって、あっちの意味だろうな。そりゃあないだろうと当たり前に思ったが、それでも答えが気になるから足が止まってしまった。彼女はケイティの質問に対してすぐさま返答した。



「ない」



あまりに短い、そして迅速な返答だった。どこかで胸を撫で下ろしている自分がいて、でもその素っ気なさになんだか笑みが零れた。マクラーゲンにざまあみろと言ってやりたい気持ちと、憐れむ気持ちが入り混じっていた。



「付き合うとか、それ自体が意味わからないよ」



マクラーゲンの顔を思い浮かべながらにやけてしまいそうになっていた僕の顔からすっと笑みが引いた。思わず彼女らの方に視線を向けると、ケイティ以外にも二人の女の子が一緒にいることがわかった。その中で彼女は、首を左右に振っていた。



「どうして?」

「コーマックだって、中身はあんなだけどハンサムだわ」

「だって、恋人ってなんか変だもん…友達よりも近いのに、友情よりも脆いし…ただの遊びにしては面白くないし、本気で愛し合うのでも相手は赤の他人なのに、変だよ」



彼女の言うこともわからなくもなかった。ただ、僕が薄く開けた口を閉じることができなかったのは、あんな言葉がまさか彼女の口から飛び出すとは思わなかったからだ。彼女は、誰かを好きになったことはないのだろうか。もしや初恋もまだとか。いや、もう恋をして痛い目にあっているのか。付き合うとかが怖いのかもしれない。いずれにせよ、彼女の言葉はあまりに冷淡な感じがした。僕の中で、なにかざわざわしていた。



「ジョージ、フレッドが呼んでるってば!」



ロンに腕を引っ張られて我に返る。人ごみの向こうでフレッドがリー、そしてジニーと一緒にいて手を振っている。僕も苦笑しながら軽く手をあげた。僕は、初恋はもう経験済みだ。恋すること、付き合うことに恐怖を感じたことはない。彼女はどうしてあんなことを思っているのだろうか、まったく想像がつかない。



「どこにいたんだ、探したのに」

「君らが先にいなくなったんじゃないか」



僕はそう答えながら頭の中では全く別のことを考えていた。意味がわからない、変だって。好きな人ができることが?付き合うことが?僕も鈍感な男でもなければ経験の極端に少ない男でもないからわかる。僕は彼女のことが好きなんだ。いや、まだ『気になっている』程度か?でも彼女はこんな僕を『意味がわからない』の一言で片づけるに違いない。僕のこの気持ちは『変』なのか?



「ジョージ、また暗い顔しちゃって」

「君ほど難しいことを考えてる顔が似合わない男はいないよ相棒」

「いいや、スリザリンのクラッブとゴイルがいるね」



僕の言葉にフレッドもリーも笑った。ジニーも薄く笑っている。僕が彼女を好きだと言ったら、みんなも、彼女も、こんな感じに笑い飛ばすのだろうか。

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