空中分解の真っ最中だ
「誰だ、あいつ」
「ハッフルパフのベニントンっていうらしい」
「純血なのか?」
「知らない」
僕はハッフルパフのテーブルを眺めながら頬杖をついたまま言った。
視線の先では栗色の髪をした長身の女とナマエがパンをかじっている。
僕の質問に答えるゴイルもパンを口に突っ込んでいて僕はなぜか急に興醒めした。
父上があの頭のおかしい校長にナマエをスリザリンに移すように手配しろと言ったが、実現することはないようだった。
彼女もさぞ困っているだろうと思っていたら、いつの間にか友人まで作って、あの様である。
安心したやら腹立たしいやらで僕は頭をぐしゃぐしゃと掻いた。
「ナマエもなんでハッフルパフの生徒にへらへら笑ってるんだ。スリザリン以外の生徒にろくな人間はいないぞ」
「ミョウジだってスリザリン以外だ」
「何か言ったか」
「…何も」
睨めばクラッブは素直に黙った。
スリザリン以外の生徒にはろくな人はいない。
でもナマエは違う、彼女はハッフルパフに入ってしまったけれども。
彼女の父だって優秀なスリザリン生だったし、彼女の母も、少し風変わりと聞いていたが立派なスリザリン生だった。
そんな二人の娘だから、彼女にスリザリンに入る素質が全くないわけがないのだ。
そんなわずかな素質を拾ってスリザリンに入れるべきだったのだ、あのおんぼろ帽子は。
「ハーイ、ドラコ」
一人の女子生徒が僕の隣に座る。
パンジー・パーキンソンといって、同じスリザリンの生徒なのだが、何かと僕に絡んでくる。
僕は曖昧に返事してまたナマエに視線を移した。
あの女にへらへら笑っている。
むかつく。
「さっきから見ているあの子は誰?」
「誰も見てないさ」
「でもさっきからあの、ハッフルパフの子を見てるじゃない」
「気のせいだよ」
「知り合いじゃないの?」
「いいや」
僕が苦笑しながらカボチャジュースを飲むと、パーキンソンはふうん、と頷いて食事を始めた。
ジュースから視線を外すと、ゴイルとクラッブが目を丸くしてこちらを見ているのが目に入った。
なんだよ、と表情だけで表現してやると、彼らは納得がいかないように視線をそらした。
しばらく会話のない静かな食事が続いた。
ハッフルパフのテーブルを盗み見ようと視線を向けると、そこにはナマエもあの女もおらず僕は思わず慌ててあたりを見渡してしまった。
すると大広間を出て行こうとする二人が見えた。
ナマエが小走りになりながらあの女に追いつこうとしている感じだ。
女は振りかえって笑っている。
イラッとした。
なるほど、僕がいなくても十分楽しくやっていけるというわけか。
あ、ナマエが出て行く。
そうクラッブが言ったので僕は彼の脇腹を思いっきり抓ってやった。
ぐあっ!、と呻き声。
「誰ですって?」
「ああ、クラッブが作った架空の妖精の名前だ」
「クラッブって意外とメルヘンなのね」
「意外とな。なあクラッブ」
「・・・」
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