始めから躓いたらしい




よく考えてみれば、ナマエにはスリザリンに入る要素は全くないのであった。
狡猾さは微塵もなく(むしろ他人のためなら自分を抑える)確固たる決意もないし(周りに流されるタイプ)純血主義でもない(マグルに偏見はないらしい)。
そんな彼女がスリザリンに入らなかったのは当然と言えば当然なのだが、僕はもう頭が真っ白になっていた。
僕が頭に描いていたホグワーツでの生活が音を立てて崩れてゆく。
隣でクラッブとゴイルがちらちらと僕の顔色を伺うように見てくるのが余計腹立たしい。
ナマエと僕が別々の寮なんて、そんなことあっていいものか。
それに彼女の両親にも僕は彼女を任せられているんだ。
責任重大なのに。



「ミョウジ家って確か、財力のあるスリザリンの家系だよな」



全てが一通り終わり、スリザリン寮に入ると上級生が話しかけてきた。
僕は彼を一瞬睨んでから、でも彼の発言の内容は嘘ではないので頷いた。
彼はへえ、と興味深そうに顎をさすりながら考える素振りを見せた。
こいつはナマエの何を知っているのか、僕の眉間にシワがどんどん刻まれていく。



「それがハッフルパフに入っちゃったのな、君の幼なじみ」

「なんでそれを…!」

「なに、有名な話さ。自分の親がアレならね」



彼は目配せをするようにして、にやりと笑った。
なるほど、だからナマエがハッフルパフに組み分けられた時にスリザリン生がざわつき、しかも僕の顔を見たのか。
妙に納得してしまった。
面白くなりそうだねえ、と呑気に言う彼に僕はどうしようもなく苛立ちを感じる。
何が面白いんだ。



僕の苛立ちに気づいたのか、もうその話に興味がなくなったのか、彼は自室へと戻っていった。
右隣を見ればクラッブがむしゃむしゃとお菓子を食べている。
そして左隣を見るとゴイルも同じくお菓子を食べていたが、僕の視線に気づいて肩を震わせた。
今そのお菓子を食べたら吐きそうになるだろう。
それだけ僕は今、気分が悪い。



「お前ら、部屋に行くぞ」



僕が言うと、二人はお菓子をまとめて両手に抱えて立ち上がった。
スリザリン寮は少し暗かった。
だが、この方が寮に合うと思った。
当然この寮に入ると思い、この学校に入学したのだから、ずっと待ち望んでいた場所だ。
胸だってあんなに高鳴っていたのに、僕の気持ちはより落胆に近い。
どうしてこんなことになってしまったのか理由ははっきりしていたが、彼女のせいにはしたくなかった。



部屋を目指す途中、黒っぽい髪の女子に挨拶された。
確か同学年だった気がしなくもない。
組み分けされていたはずだ。
僕は彼女に目を向けただけだった。
あんなの、女子が何人いたって何にもならない。
本当ならクラッブとゴイルに加え隣にナマエがいたはずなのにと考えると、やつらのお菓子をぶちまけてしまいたくなるのだった。

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