君のいない季節に




新学期の始まりの気分は最悪だった。
去年もそうであったと思い返しながら気分が憂鬱になった。
来年こそは気分よく新学期を迎えたいなどと考えながら。
汽車の乗り場で父上と母上と立っていたら、向こうからマクミランがナマエと歩いてきた。
その後ろには両親であろう男女もいる。
するとナマエの両親が彼らに駆け寄り、何やら言葉を交わしていた。
きっと「娘がお世話になりました」などという話だろう。
全ての元凶は僕だ、はいはい悪かったですね。



「おひさしぶりです」

「ナマエ、元気だったかしら」

「背が伸びたように見えるな」



ナマエが僕らのもとへ来た。
母上が彼女のことを抱きしめる。
父上は目を細めながらそんなことを言った。
僕にはそんなこと言わないのにな。



「ドラコも…久しぶり」

「ああ…」



僕らの交わした言葉に両親たちの視線が集まった。
でもどうにも会話がぎこちなくなってしまう。
以前はどんな話をしていた?
一緒にいた時間は離れていた時間よりはるかに多いはずなのに、はっきりと思い出せないのだ。



「ドラコ、もう電車が出るわよ」

「気をつけて、手紙を書くのよ。ナマエ、お願いね」



僕らの母上たちは心配そうな目で言った。
去年とはまた違った始まりだ。
父上たちは何やら話している。
汽車に乗り込み、去年と同じように家族に手を振って、そして席を探し始めようとした。
僕の手は、ぎこちないながらも彼女の手に伸びていた。
彼女の手首を掴もうとした、その時。



「ナマエ、行こうか。ジャスティンたちが席を取っていてくれてるよ」



反対側から伸びた手がナマエの手をしっかりと握った。
不意をつかれて言葉が出なかった。
言わずもがな、そいつはアーニー・マクミランで、ナマエににっこりと笑いかけている。
僕の顔に青筋が浮かんだのは言うまでもない。



「ありがとう、アーニー…ドラコ、またね」



ナマエはそう言って、握られていない方の手で僕に手を振った。
頬はほんのりと赤い。
僕が睨みつけると、マクミランも負けじと睨み返してきた。
しかし、その顔に勝ち誇ったような表情が見え隠れしているようで、僕は苛立ちではらわたが煮えくり返った。















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「ジャスティン!この間ぶり!スーザン、髪が伸びたね」

「そうなの。三つ編みが大変だわ」



ずっと手紙でやり取りをしていたスーザンとも久しぶりに顔を合わせた。
コンパートメントに入るとアーニーは私の手をすっと放した。
少し名残惜しかった。
アーニーは、私にとってとても大切な友人だから、ああやって手を握られると嬉しいのだ。
コンパートメントにはジャスティンとスーザンが向い合せに座り、お菓子を食べていた。
私はジャスティン、アーニーはスーザンの隣に座る。



「ハンナは?あとグレイス」

「さあ?でもどこかにいるでしょ。」

「ねえナマエ、アーニーの家はどうだったの?まあ手紙で話には聞いてるんだけど」



スーザンが興味津々で聞いてくる。
と言っても、彼女の言葉通りほとんど手紙で話してしまったのだけれど。
通り過ぎていく景色を眺めながら、改めてドラコのいなかった夏を振り返るのだった。

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