大広間でダームストラングとボーバトンの生徒の歓迎パーティーが開かれるため、僕は廊下を早足に進んでいた。
ダームストラングは闇の魔法に重きを置いているようで(だから父上が僕を入れたかった)そのため彼らは僕らスリザリンのテーブルで食事をすると聞いた。
あのスター選手のビクトール・クラムがいるのだ、早く行かなければとますます早足になる。
なぜクラッブとゴイルがいないのかというと、やつらはクラムのことで頭がいっぱいで僕を置いていったのだ。
いや、やつらの頭を支配していたのはご馳走か。
まあ何だっていい。
苛立ちを抑えきれないままに歩いていたら、途中でレイブンクローであろう生徒とぶつかった。
おおげさに舌打ちしてみせる。



大広間の入り口にはまだ中に入らないのか、かなり多くの生徒がいてまた舌打ちしそうになった。
邪魔だ。
どこの一団の中を突っ切ってやろうかと考えていると、何人かの一年生であろう背の低い生徒が走ってきた。(ネクタイの色は見えなかったからどこの寮だかはわからない。)
僕の横もすごい勢いで擦り抜けて行って僕は少しよろけた。
今度こそまた舌打ちした。
しかし、すぐ視界の端で倒れるものが見えて、それが見慣れぬ青色だったから(それが理由というのには無理があるかもしれないが)、気づいたら支えようと手が伸びていた。
腰のあたりで抱きとめると、その人は勢いよく顔をあげた。
青いワンピース型のコート。
ボーバトンの生徒であると気づくのには時間がかからなくて、彼女をそっと立たせた。
彼女は動揺したように服を直していたが、顔を赤らめながら「失礼しました…ありがとうございます」と言ってはにかんだ。
フランス語訛りの、独特なアクセントだった。
心臓がとくとくと鼓動する。
いえ、と返事した声が微かに震えてしまって、口元を押さえた。
なんだ、この感じ。
居心地の悪さを感じながらも、大丈夫でしたか、と聞こうと口を開きかけたのだが。



「ナマエ!」



それは女性の声によって遮られた。
見れば彼女と同じ制服を着た女子生徒がこちらに向かって駆けてきていた。
ナマエ、というのは彼女の名前であろうか。
駆け寄ってきた生徒の後ろから、もう一人生徒が続く。



「大丈夫?怪我は?」

「平気よ」

「英国の男性は皆あのようにはしたないのかしら。幻滅だわ」

「でもこの彼は私を助けてくれたの」



ナマエという彼女が言う。
すると彼女の友人がこちらを見た。
ボーバトンの生徒はみな自分の事を鼻にかけたような感じがあるが、この生徒にはそれが甚だしく感じられた。
僕の事を頭からつま先まで舐めるような視線を向け、言った。



「それはそれは、ありがとうございました」



明らかにその言葉の後には実際に発せられてはいないものの、「ではさようなら」というフレーズが続いているようだったので、僕は黙ったまま頭を下げた。
僕が立ち去ろうとするとまた声がかかる。



「あともう一つ、ハッフルパフの生徒の方々のネクタイは何色かしら」

「黄色です」



ハッフルパフのテーブルで食べるのだろうか。
高飛車女は質問をしておきながら、たいして気にしていないような顔をしていた。
僕の返答を聞いた三人は揃ってコートの裾を持ち上げて会釈をした。
彼女たちの挨拶らしい。
先ほどの高飛車女が僕に嫌な視線を送ってきたので、僕は気分を悪くしながらもその場から離れなければならなかった。



「では」

「ええ」



僕も頭を下げて大広間へ向けて早足で歩き出す。
今さらながらにクラムのことが思い出されて僕は焦った。
歩く足を速めながら僕は右手で強く心臓を押さえた。
さっきから煩い。
収まれ収まれと思っているうちに大広間につき、中を見回せばスリザリンと一番離れたテーブルに青い制服と黄色のネクタイが混ざって座っていた。



「マルフォイ!」



クラッブが立ち上がって僕を呼ぶ。
僕の焦りなど全く不要だったようで、ビクトール・クラムの隣はしっかりと僕のために空けられていた。
僕はクラッブとゴイルをちらと睨み、クラムの隣に座った。
本物だ、と思った。



「遅れて申し訳ない」

「いや、いいんだ」



クラムは歯を見せて笑った。
彼はやはり体つきががっしりとしていて、間違いなく僕とはタイプが違うと思った。
ジュースの入った杯を彼とぶつけ合いながら僕はハッフルパフのテーブルを盗み見た。
楽しく談笑する彼らの中に探している姿は見つからず、僕の視線はクラムのもとへ戻った。
僕をまたいでクラッブがクラムに話しかけている、とても楽しそうに、大声で。
苛立って、彼の脇腹に肘を入れてやった。

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